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「俺も、おかわりしてくる」

「あっ、俺も」


佐野君と拓也君がカウンターに注文をしに行くと、私の隣に座る美樹ちゃんが顔を寄せてきて。


「かなちゃん、佐野君ね?後輩君達にかなちゃん盗られちゃって拗ねてたよ?」

「え?…、それホント?美樹ちゃん」

「うん。岩場に座っていじけてた」


言われて見れば……


今までこんなに大勢で遊んだ事なかったから、みんなと遊ぶのが楽しくて、何回も飛び込みしたり、泳いだりしてた。


佐野君。
拗ねてたの?
いじけてたの?
言ってくれればいいのに……


私もバカだ。


少しでも長く佐野君と一緒に居ようと思ってたのに……


「ね?君達、二人で来たの?」


不意に私と美樹ちゃん後ろの方から、真っ黒に日焼けした男の人二人組が話しかけてきて、私と美樹ちゃんを挟んで横に座ってきた。


「うわっ!君ら二人とも超かわぅぃーね♪」


何?
この人達……
お笑い芸人にこんな人が居たような?


「ねね?俺等と一緒にボディーボードやんない?ここじゃなくてさ、人の少ない穴場知ってんだ」


マサト君が座っていた所に座り込んできた男の人が、タオル越しに私の肩を抱いてきて、グイッと自分の方に引き寄せた。


「ちょっと、何すんのよ!かなちゃんに触んないで!」

「怒った顔も超かわぅぃー♪」

「はあ?あんた達バカじゃないの!?」

「俺等バカでぃーす♪あははは♪」


誰か居ればこんな人達に声をかけらたりしなかったんだろうけど、生憎今は皆注文しに行ってしまっている。


「あの、離して下さい、連れが居ますから」

「えー?嘘だあ。誰も居ないじゃん?」

「今は席を外してますから」

「じゃ、それまでお話ししよ?てかアド教えて?」


何でいきなり話しかけられた見ず知らずの人に、アドレスを教えなきゃいけないんだろうか。


「おい、チャラそうな男、略してチャラ男、奏さんから離れろ」


後ろからマサト君の声がして。


「はあ?なんだと?このクソガキ、ガキは帰って昼寝でもしてろ!」


男の人は振り向いて勢いよく立ち上がった。