「……美樹ちゃん、盗み聞きなんて趣味悪いね?」

「失礼ね。聞こえただけで、盗み聞きなんてしてないわよ」


そう言って俺の隣に座る美樹。


「佐野君ってバスケの凄い選手だったんだってね。リョータ君から聞いたよ。だからあんなにバスケが上手かったんだね」

「……昔の話だよ」

「あはは。昔って、そんなに何十年も生きてないでしょ?」


美樹は俺の背中をバチンといい音をさせて叩く。


何気に痛いぞ。
手形が付くだろ?


「ね?そろそろ戻らない?お腹空いた」


そう言えば今朝は遅くに朝飯食ったから、俺の腹時計からしてもう昼過ぎ?14時位か?


「そうだな、俺も腹減った」

「じゃ、行こうか?拓也ーっ!お腹空いたー!」


美樹は立ち上がると、ゴムボートに乗ってユウト達とはしゃぐ拓也に手招き。


丁度その時奏も俺が座る岩場の下から、もう何度目になるかわからない飛び込みを終えて泳いできて、海から上がろうと岩場の下に手をかけた所で。


「あ、かなちゃん、飛び込みはもう終わりね。ご飯食べに行こ?」

「うん。そうだね、お腹空いたぁ」


それからリョータ達も一緒に岩場を引き上げる事に。


戻りは俺と奏と拓也と美樹。
四人でゴムボートに乗り、リョータ達にロープを引っ張らせる。


散々奏と遊ばせてやったんだ、この位はしてもらう。


砂浜に戻り、バレーコート近くに陣取る数人のバスケ部と高田先生がなにやらやっている様子で、そこに近付くと。


「先生何やってんの?」

「あ、お前ら戻ってきたか、日光タトゥーだよ。バスケ部全員そこに並べ、茜、お前も手伝え」

「日光タトゥー?」


見るとバスケ部一年の右肩下辺りに、白の油性マーカーで[victory]の文字。


どうやらそこに白で文字を書いたら、自然と[victory]の文字が焼けずに残るみたいだ。


「ははは。なるほど、うん。手伝うよ」

「何度もなぞってしっかり書けよ?ほら」


先生からもう一本のマーカーを受け取り、リョータ達の腕にタトゥーを施していく。