………先生。
わかってるよ私も。
佐野君はホントは誰よりもバスケットが好きなんだよ。
見てたらわかるもん。
痛い位に伝わってくるもん。
跳びたいって。
走りたいって。
でも……
それが出来ないのはきっと私のせい……
私が佐野君に必死にしがみついてるから。
行かないでって、声にならない声で。
態度に出さない態度で。
全部…、私が悪いんだよ。
佐野君の輝かしい未来を壊しているのは……
………私自身。
「……先生、いつから…アメリカに…、行くのがいいんですか?早い方が、いいんですか?」
私はまたカラカラになった喉から、掠れた声を絞り出す。
「…出来れば、向こうの年度が代わる、10月から…」
「……そうですか」
10月……
あと…、3ヶ月。
「…すまないね、君に、こんな事言うなんて…、でも、最終的に決めるのは、茜本人…でもね?奏さん、一生行ったきりになる訳じゃないんだ。離れいても会おうと思えばいつだって会える、君達を見ていると、そんな事位でダメになったりしないと思う。あのストイックで一見冷徹な茜が、君を物凄く大事に思っているのがひしひしと伝わってくる…だから、何も心配はいらないと思うよ」
そう言って先生は優しく微笑んだ。
会おうと思えばいつだって会える……
そんな事は無理。
佐野君が行ってしまったら、私達は……
もう……、会えない。
でも。
行かせてあげたい。
佐野君がアメリカで活躍する未来を本物にしてあげたい。
その為に私に出来る事は……
「わかりました。佐野君に、アメリカに行くよう…、話をしてみます」
「ホントかい?」
「……はい」
「ありがとう。奏さん…、感謝するよ」
「…感謝するのは私の方です、もう先生の生徒じゃないのに…、こんなにまで、佐野君の事考えて下さって…」
「卒業したって、ずっと茜は俺の生徒だよ、勿論リョータ達もだけど、何より俺が茜のバスケセンスに惚れ込んでるからね?ははは」

