「マサト君、こっち来て」
奏はマサトの腕を掴むと、パラソルの中に引き入れた。
「ちょっと、横になってて」
「だっ、大丈夫ですからっ」
「ダメ、早く横になって」
奏にぴしゃりと言われて、マサトは渋々そこに横になり、そのマサトの隣に座る俺とバッチリ目が合う。
「…何見て鼻血なんか出してんの?」
「……すみません…」
赤すぎる顔で鼻を押さえ、鼻血を垂れ流すマサト。
まだ中二のマサトには奏の生着替えは刺激が強すぎたか……
それにしても奏……
いくら下に水着着てるからって、あまりにも無防備過ぎるだろ?
マサトに限らず回りの野郎共にも確実に見られてた。
それだけ脱ぐと言う行為は男にとって、夢と希望と妄想を与えちゃうんだぞ?
そう言えば以前アパートでもTシャツ一枚で外に出たりしてたったっけ?
「マサト君ちょっと頭上げてね?」
「へっ?…えっ?…わっ!」
奏はマサトの頭を両手で抱えてそれを自分の膝の上に乗せてしまった。
タオルでマサトの鼻を押さえて、首の後ろをトントンと叩く奏。
………奏…
いくらなんでもそれはやり過ぎだろ?
「かっ、奏ひゃん!らいじょぶ、れすからっ」
慌てて身体を起こそうとするマサトの頭を、奏は再び膝の上に押し付けた。
「動いちゃダメ、いつまでも、血が止まらないよ?」
「…余計にれちゃいまふ…それに」
マサトはチラリと俺を見て。
「ひゃのへんぱい…、怖いれす…」
当たり前だ。
水着な奏に膝枕なんて……
俺が鼻血出したい位だ。
「何で急に鼻血出ちゃったんだろ?暑さでのぼせたのかな?」
マサト首の後ろを叩きながら、少し背中を丸めて、上からマサトの顔をニッコリと微笑みながら覗き込む奏。
その笑顔と見上げる奏の姿は、まさに思春期真っ只中のマサトにサードインパクトを引き起こさせたらしく。
「……っ!、わあぁぁっっ!!」
「ちょっ、マサト君っ?」
マサトはガバッと身体を起こし、大声をあげながら走り去ってしまった。
その後ろ姿を呆然と見送る奏は、マサトが前を両手で押さえて走ってる事に気付きもしていないんだろうな……

