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「じゃ、帰る時は電話かメールしてね?」

「うん。送ってくれてありがと、母さん」

「いいのよ、楽しんでらっしゃっい」


母さんに車で海岸まで送ってもらい、荷物をおろして道路の上から砂浜を見下ろすと、溢れんばかりの人、人、人……


微妙に田舎なこの街も、年に一度のこのシーズンばかりは大勢の人々で賑わう。


駐車場は何処も満車。


海岸通りの道路は路肩に停めてある車と、行き交う車で渋滞を引き起こす。


地元民にとっては大変迷惑な話だけど、その恩恵に預かっていることも確かで、夏限定の海の家や、海沿いのホテルや民宿等は何処も満杯。


夏限定のにわか観光地と化す。


「スゲー人…パラソル立てれるかな?」


うちから持ってきたパラソルを肩に担いで呟く拓也に奏が。


「ごめんね…拓也君、私が寝坊しちゃったから…もっと早くに来てたらこんなにまで人は多くなかったかも…」

「へ?…、そんなつもりで言ったんじゃないよ、かなちゃん、パラソルなんて、立てないなら立てなくてもてもいいんだから、早く下行こう♪」

「場所は、多分あいつ等が確保してる筈…」


石段を降りながら俺が俺がそう言うと。


「奏さんっ!」

「はいっ!…って、え?…コースケ君?」


俺なんかには見向きもしないで、砂浜を奏目掛けてコースケが駆け寄ってきた。


「お久しぶりです。奏さん」

「ホント、久しぶり、今日練習は?」

「今日の練習はビーチバレーです!」

「…はい?」


リョータは奏の前までやって来るとボールを指先でクルクルと回してみせた。


俺はそんなコースケの額にデコピン。


「イテッ!…なにするんすか、先輩のデコピン痛すぎ!」


大袈裟に痛がり額を押さえるコースケ。


「あほ。練習休ませてもらって、ビーチバレーで遊んでるだけだろが」

「バスケ部のみんなも来てるの?」

「はいっ、先輩達の為に場所取りしてあります。あの…そっちの可愛い二人組も先輩のツレ?」


コースケは俺の肩越しに後ろの拓也と美樹を指差す。