着替えて顔を洗ってからリビングに入ると、キッチンからお母さんが。
「おはよう、奏ちゃん」
笑顔で迎えてくれて。
「お母さん、おはようございます」
私も笑顔で応えてキッチンへと入る。
佐野君は既にテーブルに着いていて、トーストにバターを塗っていた。
「ごめんなさい、寝坊しちゃいました、あ。手伝います」
「ふふふ、いいのよ、気にしないで?早くご飯食べちゃいなさい?」
お母さんに促され佐野君の向かい側に着くと、ベーコンエッグ、野菜サラダ、紅茶が既に用意されていて、佐野君がトーストの乗ったお皿を私に差し出して。
「はい、奏の分、早く食お、腹減った」
「ありがと、先に食べててよかったのに…」
お皿を受け取りながらそう言う私に、お母さんもコーヒー片手に佐野君の横に腰を下ろした。
「あら?あなた達、ブレスレット、お揃い?」
「うん。いいだろ?これ」
佐野君は私の腕をテーブル越しに掴んで持ち上げて、それをお母さんに見せると。
「いいなぁ、お揃い…お母さんも欲しい…」
「ペアって言えないの?父さんに買ってもらえば?」
「え〜…お父さんとお揃いなんて、なんかやだ…向井君とお揃いならいいけど…」
「…やだって、父さん、気の毒に…てか向井君て誰だよ?」
「向井理君、お母さんの恋人♪うふふ♪」
「………いただきます」
言うと佐野君はトーストにかじりつく。
お母さん、あの俳優さんが好きなんだ、確かに格好いいもんな。
でも……
佐野君の方がもっと格好いいかな?なんて。
「へへ…」
「?…何が可笑しいの?」
「へ?…あ、ううん何でもない」
「思い出し笑い?」
「うん。えへへ、そんなとこ、わあ。美味しそう、お母さん、いただきます」
佐野君の事、格好いいとか考えていると、変な笑い声が出てしまって、恥ずかしくて、それを誤魔化すように私もトーストにかじりついた。
佐野君と一緒に遅めの朝食をいただく。
さっきまで夢見て泣いてたなんて嘘みたい。
今は佐野君と向かい合わせて笑ってる。
もう少しだけ………
佐野君と笑っていたいな……

