…佐野君。
佐野君……
何処に行っちゃったの?……
一人は寂しいよ……
………佐野君…
何処にも行かないで……
「………なでっ」
………佐野君の声?…
「…でっ!…奏っ!」
「!っ、うあっ?」
「奏っ?どうした?」
「……あ…佐野…君?」
目の前には心配げに私を見下ろす佐野君。
「泣いてる…怖い夢でも見た?」
私の頬に手をあて、その濡れた目元を親指で拭ってくれた。
「え?…泣いてる?」
「うん。俺の事呼びながら…」
「…佐野君の事?」
「声かけるけど中々起きなくて…どんな夢?」
……どんな夢?
私……どんな夢見てた?…
「……覚えてない…」
「は?」
「夢は見てた気がするんだけど…どんな夢か…覚えてない…」
「スゲー、泣いてたのに?」
「……うん」
ホントに…どんな夢見てたんだろう?……
覚えてないけど、胸の奥が、凄く、苦しい…
「…まあ、怖い夢なら覚えてない方がいいか…大丈夫か?起きれる?」
「うん。起きれる、って、今何時?」
「もう直ぐ10時」
「えぇっ?もうそんな時間?」
私は勢いよく身体を起こした。
部屋を見てみると、美樹ちゃん達の姿はなく、お布団もしまわれいた。
「よく寝てるみたいだったから、起こさないで寝かせといたんだ、寝つけなかったって言ってたから」
「ごめんなさい…かなり寝坊しちゃった」
「はは。いいってたまには寝坊して…おはよ。奏」
笑うと佐野君は、私の頭を撫でてくれながら額にキスをくれた。
おはようのキスなんて初めてかも…
何だか照れくさい…
…でも、嬉しい。
「朝飯、俺まだなんだ、一緒に食おうか?」
「美樹ちゃん達は?」
「探検してくるって、散歩に行った、もうそろそろ帰ってくるだろ?そしたら海に出掛けよう」
「うん」
そうだ。
今日は楽しみにしてた海水浴に行くんだった。

