兄貴は結んだ帯をポンと叩くと。
「…何の話かは、わかってるよな?」
「……多分」
「多分て……お前は、どうしたい?」
…俺は…どうしたい?
…………俺は。
「……バスケが…したい…」
ああ。
口に出して言っちまった……
「……そうか…」
兄貴はそれ以上何も言わなかった。
着馴れない浴衣を着せられて、階段を降りてリビングに戻ると、一斉に視線が注がれる。
「……佐野君…素敵…」
奏が小さく呟いたのを聞き逃さなかった俺。
「あら、茜、似合うわ」
「ははは、そうか?」
「……俺もそっちがよかった…ぐふぅっ!」
「ん?何か言った拓美ちゃん?」
「いえ、何も……」
「次、奏だって…」
「あ、うん。行ってくるね?」
ソファーから立ち上がり、リビングを出る奏。
その背中が入り口から消えてしまっても、俺はそこをじっと見つめていた。
奏。
……俺、バスケがしたいんだ。
でも、今のままの奏を放ってアメリカに行く事なんて出来ない……
それ以上に…奏と離れたくない……
俺は………
どうすればいいんだ?……
無限のループにただ身を任せていても、答えなんか出てこなくて、俺はただ必死にそのループから抜け出そうとするけど……
バスケと奏。
そのどちらを選ぶかなんて、今の俺には出来そうに無かった……

