程なくして。


「わあ、美樹ちゃん、凄い可愛い〜!」


今度は奏が歓喜の声を上げる。


「えへへ、そう?拓美ちゃんより可愛い?」

「うん。可愛い!」


美樹はピンクの花柄の浴衣の袖口を指先で摘まみ広げて見せて、首を傾げてソファーに座る拓也の前でポージング。


「どう?拓美ちゃん?似合ってる?」

「……超…可愛い…」


美樹を見上げてぼそりと呟く拓也。


「ふふふ、当たり前でしょ?」


そのままくるりと一回転。


確かに可愛い。
今更ながら兄貴の仕事振りは凄いと思う。


もう少し社会人としての自覚があればいいんだけど……


「さ、次は茜、お前だ」


は?


「俺?……」


と自身を指差す。


「そうだお前だ、後が支えてるんだから、俺が花火大会浴衣デートをプロデュースしてやる、早くしろ」


兄貴に腕を引っ張られ、兄貴の部屋へと連れて来られてしまった。


「兄貴…俺いいよ…」

「何言ってる?お前の浴衣も買ってあるの、さっさとしろ、ラストは奏ちゃんが控えてるんだから、早く脱げ」


脱げって……
………仕方ない。
言う通りにするしか無さそうだ。


ん?


脱ぐって……


「兄貴…拓ちゃんと美樹ちゃんも脱がせたの?」

「あほか、そんな事するかよ、女の子はキャミかタンクトップ着用だ、浴衣は自分で羽織らせたよ、しかし、拓美ちゃん…あんなに美人なのに残念だな…」

「残念?…何が?」

「……………胸が」


当たり前だ、男なんだから。


「……でも、貧乳も…ありかも」


……この変態め。




浴衣を羽織り、腕を上げて兄貴に帯を巻き付けられると、さっきまでは浴衣なんて面倒だと思ってだけど、これを着て奏と二人で歩く姿を想像してしまって、これはこれでありだな。なんて思ってしまって口元が緩んでしまった。


後ろで兄貴が帯を締めながら。


「…何度か、高田先生から電話があったぞ…」

「……うん」

「一度会って話がしたいって…」

「……うん。明日の朝にでも行ってくるよ…」

「そうか……よしっ、と、出来たぞ?」