「ただいまぁ、見て見て、西瓜頂いちゃった♪冷やしておくから夜にみんなで食べましょうね?」


母さんがデカい西瓜をぶら下げて帰ってきた。


二つに割って冷蔵庫にしまっていると、兄貴がリビングに入ってきて。


「さ、拓美ちゃん♪入っておいで」


兄貴の後ろでモジモジと動く物体は、中々リビングに入って来ようとしない。


「ほら、何恥ずかしがってるの?超綺麗だから、みんな驚くよ?」


兄貴が拓也を促し恐る恐る拓也はリビングに入ってきて。


「きゃあぁぁ♪拓美ちゃん!可愛い!」


母さんが両手を叩いて歓声を上げる。


そこに立っていたのは、紺色の朝顔の浴衣を着た、ふわふわのロングヘアを横で緩く束ねられ、うつ向きがち長い睫毛をパチパチとさせて、上目使いで恥ずかしそうに頬を赤く染めた、潤んだ瞳の浴衣美人がそこに居た。


「「「……………」


俺と奏と美樹は暫し絶句。


……何だこれ?
……拓ちゃん?


いや、確かに顔は拓也に間違いないが、そこに居るのは、どう見ても奏といい勝負位の綺麗な女の子。


兄貴……さすがプロ…
いい仕事するよな……


「拓也く…拓美ちゃん、すごく綺麗…ね?美樹ちゃん?」

「ふ…そ、そうね…ま、まぁまぁかしら…ははは」


引きつる美樹に俺は思わず吹き出してしまいそうになった。


美樹より綺麗でさらに色気まである。
彼女より美人な彼氏って……


ははは。
美樹ちゃんお気の毒。


「急いでウィッグ買って来たんだよ、拓美ちゃんはロングヘアが似合うね?凄く可愛いよ?」


作品に大満足の兄貴。


「静さんっ!!」


美樹がソファーが勢いよく立ち上がる。


「はい?何?美樹ちゃん」

「次はあたし、お願いしますっ!」

「ははは、わかった」

「絶対拓美ちゃんより美人にして下さいっ!!」

「は?…う〜ん…美樹ちゃんは丸顔で可愛い顔立ちだからな〜…」

「お願いしますっ!」

「はは、やってみるよ、上行こうか?」

「はいっ!」


ズンズンと兄貴の後ろに着いていく美樹は、ギロリと拓也を睨み付けフンッと鼻で息をした。