午後5時過ぎに約一ヶ月振りの自宅に帰り着いた。


夕方の時間帯だけど真夏の太陽はまだギラギラと熱を放っていて、車を降りると一気に身体が熱気に包まれて、微かに吹いてくる熱を持った風が潮の香りを運んでくる。


「わあ、ここが佐野君んちか、結構大きいね?」


美樹が呟き、トランクから荷物を出すと、兄貴は買い物に行ってくるとそのまま車で家を出て行って、玄関を開けると母さんが俺達を笑顔で出迎えた。


「お帰り、茜」

「うん。ただいま」

「奏ちゃんも、お帰りなさい」

「え?…えっと…ただいま、です…」


母さんのお帰りの一言に何故か照れてる様子の奏。


「茜?後ろの可愛い二人組は?」


母さんは身体を横に向けて俺の後ろの拓也と美樹に目配せ。


「拓ちゃんと美樹ちゃん」


俺がそう言うと二人はグイッと俺と奏の間に割って入る。


「始めまして、佐野君のお母さん、今日は押し掛けちゃってすみません、お世話になります」


玄関先で深々とお辞儀をする拓也と美樹。


「あれ?一人は男の子って聞いてたけど…」


キョトンとする母さんに美樹は。


「……実はお母さん…拓美ちゃんは男の子だけど、女の子なんです…」

「え?…それって…あの?」

「はい。だから、女の子として接してあげてください、お願いします。ね?拓美ちゃん」

「……………ははは」


呆れて笑う拓也に母さんは目をキラキラとさせて。


「わかったわ!拓美ちゃん、大丈夫よ!お母さんはそこら辺の理解はあるから、でも何処から見ても女の子に見えるわよ?拓美ちゃん、お母さん可愛い女の子大好き!だから、変な気遣いはしないで普通にしててね?ふふふ」


………拓ちゃん。
完全に美樹から遊ばれてるな…
しかしうちの母さんまで騙すとは……


バレたら怖えーよ……


ま。


一日位なら大丈夫か……


ははは。