「ホント。三人並ぶとアイドルみたいだね?」
後部座席に座る三人を運転席から振り返り、上機嫌なバカ静。
俺は隣でそんな兄貴を可哀想な物を見る目で見つめる。
「え〜?そうですか?でもよく言われます、ね?拓美ちゃんかなちゃん?」
「「……ははは」
乾いた笑いを出す奏と拓也。
何も知らない兄貴は満面の笑みを浮かべて車をスタートさせた。
「三人ともうちに泊まるんだよね?」
「はい。お世話になります」
後部座席の真ん中に座る美樹が俺と兄貴の間から顔を覗かせた。
「そっか、ぐふふ…」
「静さんって美容師なんですよね?かなちゃんから聞きました」
「うん。そうだよ、あ。美樹ちゃんと拓美ちゃんも俺がメイクしてあげる、二人とも浴衣は持ってきてる?何なら買ってあげようか?」
「わあ。ありがとうございます、私達のは持って来てます、買うんならかなちゃんの分だけ買ってあげて下さい」
「ははは、奏ちゃんのはもう用意してあるよ、今夜は三人の女の子のメイクかぁ…腕がなる」
………拓ちゃん。
今夜は浴衣美人にさせられんのか。
明日の海ではビキニかな?……
…………おえ。
俺の豊かな想像力を俺は呪う。
車内は兄貴と美樹が偉く盛り上がってて、途中喉が渇いたとファミレスに寄り。
そこで一時間程時間を潰してから、俺の地元へと再び車を走らせた。
始めは拓美も戸惑っていたけど次第に慣れてきたのか、女の子のフリをするのも板についてきた。
美樹に何を吹き込まれたのかは知らないけど、満更でも無い様子。
まあ、美樹の彼氏をやってる位だから、この程度の事は想定内なのか、ただ単に乗りがいいのかは謎だけど。
それから暫くすると海岸通りに出た。
拓也はウィンドウを全開に開けて。
「海だっ!!美樹っ!かなちゃんっ!海っ!」
「あははは、拓美ちゃんは元気な娘だね?」
元気な男の子。
なんだけどね?
いつまで騙されんのかな?
バカ兄貴は。

