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奏との運命の出逢いも虚しく、心に絆創膏を貼って試合に挑んだヨースケだったけど。


いざ試合が始まるとスイッチが入ったみたいに顔付きまでもがガラリと変わり、前回に続きヨースケ達のチームの勝利で試合終了。


整列して礼をすると、ニッと笑って俺達の元へとやって来た。


「洋介さん、お疲れ様、試合、とても凄かったです…」

「奏ちゃんが見てるから余計に気合いが入ったよ、勝ててよかった、ははは」

「…奏が居ても居なくても、気合い入りまくりだろ?洋ちゃんは…」

「当たり前だ、負けるつもりで試合に挑むやつが居るかよ」


と、自信満々なヨースケ。


それから俺と奏は後片付けを手伝い、奏はコートのモップがけまでやっていた。


気付けば正午を回っていて、ヨースケから昼飯に誘われた。


拓也達とは午後2時半に駅構内で落ち合う事になっていて、まだ少し時間に余裕があり、ヨースケと三人で昼飯を食う事に。


車椅子から降りたヨースケはそれを車のトランクに詰め込むと運転席に乗り込んだ。


ホントにそうやってると何も知らないやつは、ヨースケの左足が無いなんて気付きもしないだろう。


奏も初めは驚いてたし。


「どうした?乗れよ?」


ヨースケの車とは違う方向に歩き出した俺達に、ヨースケがウィンドウを開けながらそう言って。


「俺達、バイク」


GPXを指差す。


「バイク?この暑い中…奏ちゃんこっちに乗りなよ?」


確かに真夏のバイクは照り付ける日中の太陽がアスファルトを焦がし、反射して、上からも下からも熱気が襲って来る。


こう言う時ってバイクはキツいよな、俺はいいけど奏が可哀想で。


「奏、洋ちゃんの車乗ったら?バイクは暑いだろ?」

「ううん、バイクがいい…洋介さんありがとう、でも、佐野君のバイクに乗ります」

「……そっか、そうだよな…暑くても佐野のバイクの方がいいよな、はは…」

「はい。私、バイク大好きですから」


奏はそう言って笑って見せた。


バイクが好き。
俺とバイクに乗るのが好き。
つまり俺の事が大好き……


なんて考えて、ニヤケてしまった。