車椅子バスケットの試合は佐野君が言っていたように、普通のバスケットと殆どルールは同じだった。


タイヤがハの字に傾いている車椅子が激しく行き交い、そのタイヤが擦れて時折焦げる事もあるらしい。


コートの中の洋介さんは巧みに車椅子を操り、次々とシュートを決めていく。


始めはあまり乗り気じゃ無かった車椅子バスケットの試合観戦も、いざ試合が始まると、いつの間にかそれすらも忘れてしまって、夢中になって洋介さんの応援をしてしまっていた。


佐野君も凄いけど、洋介さんだって負けてない。


上半身を使って必死にタイヤを漕ぐ姿は、見ているだけで胸が熱くなってくる。


片足を無くてしまっても、それでもバスケットを諦めず、あんなにも輝いて。


その全身から私の心の中に伝わってくる。


バスケットが大好きだって。


佐野君と同じ輝きを放ってる……



「…あっ!洋介さん!」


激しく車椅子がぶつかり合い接触してしまって、洋介さんの操る車椅子が転倒してしまった。


車椅子ごと倒れてしまった洋介さん。


「大丈夫…洋ちゃんは直ぐに立ち上がるよ」


隣に座る佐野君がそう言うと、洋介さんは片足と両腕を使って車椅子を起こし再びプレーを再開。


再び洋介さんはコートの中を走る。


全身を使って力一杯走ってる。


……洋介さん。


貴方のプレーは佐野君と同じように、見ている人を自然と惹き付ける。


それは洋介さん自身がコートの中で自身に満ち溢れているから。


……佐野君は自身が無いって言ってたけど……


そんな事は無い。


コートの中の佐野君は誰よりも自身に満ちて輝いている。


だから強烈に惹き付けてられてしまう……


隣の佐野君を見てみると、息もしてないんじゃないかと思う程、ただひたすらにコートの中を見つめている。


………佐野君。


本当は……


自分が走りたいんだよね?


自分が跳びたいんだよね?


洋介さんと同じように、痛い位に伝わってくるよ……


…また…バスケットがやりたいって…