「……洋ちゃんって…岩澤さんの事だったんですか?」
「…あ…うん…て、俺岩澤じゃないよ?岩澤は母方のばあちゃんの姓だから…俺は中村、中村洋介…」
「佐野君から聞いていた洋ちゃんが洋介さんだったなんて…驚きました…」
「ははは、俺も驚いた、まさかこんな所でまた君に会えるなんて…あれからちょくちょくばあちゃんちに行ってくれてるんだって?ばあちゃん、可愛い友達が出来たって喜んでたよ」
「そんな事…お花頂いたりして…私の方こそお世話になってます」
「いや、ばあちゃんも奏ちゃんの事、庭の手入れも手伝ってくれるって、感謝してたよ、ありがとう、奏ちゃん…俺もまた会えて嬉しいよ…」
「…ちょっと待って、話が見えないんだけど…」
佐野君が会話に割って入ってきて。
「あのね?佐野君、洋介さんはね……」
おばあちゃんの事は話していたんだけど、洋介さんの事までは話していなかったから、あの夜の出来事を詳しく佐野君に説明した。
「…で、その孫息子が洋ちゃんだったと…」
「うん、でもびっくりしたなぁ…」
だって…あの時は洋介さん…
普通に歩いてた……
まさか片足が無いなんて、想像もつかなかった……
「ちょっと待った、今度は俺の方が話が見えない…つまり、黒助は佐野が飼ってるのか?」
「うん。そうだよ、黒助じゃなくてシロ」
「…で、何で奏ちゃんと一緒にここに居るんだ?」
「洋ちゃんの試合を見に来た」
「そんな事はわかってる…もしかして…二人は付き合ってる?」
「……だったら何?」
「……ははは、何だよ…運命の出逢いだと思ってたのに……」
「…………残念だったね、洋ちゃん」
佐野君は洋介さんの肩にポンと手を置いた。
洋介さんの足の事ばかり考え込んでいた私は、二人の会話が耳に入ってこなくて、何やら洋介さんはガックリと肩を落として、乾いた笑いを出していた。
佐野君……
試合前の洋介さんに一体何を言ったの?
「ははは…早くにわかって…よかったよ…傷は、浅かったかな?」
「絆創膏、貼っとく?」
「……いらねぇよ…」
洋介さん、何処か怪我でもしたの?

