土曜日。
私は佐野君に連れられて、区立第二小学校までやって来ていた。
今日はここの体育館で、車椅子バスケットの試合が行われる。
佐野君はいつもは低血で、朝はテンションが低いんだけど。
いや、割りといつも佐野君はテンションが低いのだけど…
低いと言うよりも落ち着いてる?
まあ、そんな感じで、割りといつもはしゃいだり、物事に動じたりはあまりしないタイプなんだけど。
今日はいつもと違って朝から上機嫌で、私が朝からアパートに行く時は、いつもベッドで寝ている事がほとんどなんだけど、今朝は既に着替えまで済ませていて、私を驚かせた。
…そんなに楽しみだったんだ。
佐野君……
ご機嫌な佐野君とは裏腹に、私はあまり乗り気がせず気持ちが沈んでしまって、これじゃ駄目だと気持ちを切り替えて、今日を楽しむ事を考えた。
今夜は花火大会。
それを思い浮かべて笑顔を張り付ける。
バイクを駐車場に停めて体育館へと向いながら佐野君が。
「奏、車椅子のバスケって見た事ある?」
「ううん、テレビなんかでちょこっと見た事ある位」
「見たら驚くぞ?普通のバスケと殆どルール変わんないから」
嬉しそうに話す佐野君。
佐野君とバスケット。
それは切っても切り離せない絆みたいで、私はそんな佐野君を見ていると胸が苦しくなってしまった。
「……そうなんだ…」
無理に笑っているから、曖昧な返事しか返せずに、先を歩く佐野君の後に着いて体育館にたどり着いた。
佐野君が扉を開けるとそこには、走り回る車椅子と大きな掛け声。
「洋ちゃん!」
佐野君がそう叫んでこちらを振り返り、車椅子を漕ぎながら、笑顔でこちらに向かってきた人は。
「……岩澤…さん?」
私は自分の目を疑ってしまった。
だって目の前に居るおばあちゃんのお孫さんの左足は……
「えっ?…奏…ちゃん?何で?ここに?」
膝あたりから下が無くなっていた。

