リビングの窓から見渡すお庭は、外から見るよりも一段と綺麗で、窓全体が一枚絵のようになっていて、この部屋から外を見る為に作られたお庭なんだと言うのが伺える。
おばあちゃんは五年前にここに家を建て、ご主人と二人、老後の住まいとして、こちらに越してきたらしい。
でもそのご主人が三年前に亡くなってしまい、それからは独りでこのお家に住んでいると言う。
毎日独りで寂しくていたら、お孫さんが知り合いからハルちゃんを貰って連れて来てくれて、それからはハルちゃんと二人。
お孫さんはよく遊びに来てくれるみたいで、おばあちゃんはそれがとても嬉しいみたい。
「あ。紅茶、おかわり入れましょう」
立ち上がろうとするおばあちゃんより私が先に立ち。
「私が入れてきます」
そう言ってキッチンへ。
ピカピカのシステムキッチンは使い勝手もよくて、こんなキッチンでお料理が出来たら楽しいだろうな、なんて思ってしまうほど広々としていて、うちのアパートの狭い流しとは大違いだった。
備え付けのグリルもあって、ローストチキンなんかも二ついっぺんに作れそう。
紅茶を入れて再びリビングに戻るとおばあちゃんが。
「奏ちゃん、恋人は居るの?」
恋人。
と言う言葉に、真っ先に頭に思い浮かべてしまったのは佐野君。
「……とても…大好きな人が居ます…」
そう言って私はソファーに腰を下ろした。
「あら、残念、あの子も可哀想に…」
「え?…何がですか?」
「ふふふ。いいえ、何でもないのよ、奏ちゃんみたいに可愛らしい子に好きなってもらえるなんて、その方は幸せよね?」
そう言って笑いながら紅茶を口に運ぶおばあちゃん。
……おばあちゃん。
佐野君は私なんかに想われてしまって…
幸せなんかじゃ無いです……
佐野君の気持ち知ってて、それに応える事が出来ない私は物凄く卑怯な人間なんです……
なんて、言える筈もなく、私はうつ向いて、手に持ったカップを見つめた。

