貴司と二人、ベンチに並んで座り、車椅子バスケの練習試合を眺めていると。


「…俺と洋ちゃん、母方のいとこ同士なんだ…」


貴司が語りだした。


「俺がミニバス始めたのは洋ちゃんの影響、ひとつ上なだけなのに、背が高くてカッコよくてさ…俺も洋ちゃんみたいになりたくて、ガキの頃はバスケやってたんだ、でも、そこまで洋ちゃんみたく真剣にやってた訳じゃ無くて…ただ洋ちゃんの真似してただけだった…

そんな俺がミニバスなんて続く筈もなくて、直ぐに飽きちゃてさ…小5になる頃にはもう遊び半分でやってた。

でも、洋ちゃんは違った、全国大会。小5小6と二回も優勝したんだぜ?

中学になって地元のクラブに誘われてたんだけど、それ断って普通に部活でバスケ部に入ってさ、全国目指すって以前より増してバスケに打ち込むようになった。

二年三年追い越して、直ぐにバスケ部のエースになったよ。


………でも。


県大会優勝して、洋ちゃんが中1の夏休み、朝練に向かう洋ちゃんの自転車に、居眠りのトラックが突っ込んできて……


左足を失ったんだ……


……あんなに才能に溢れてて、誰からも期待されてて…誰よりもバスケが大好きだった洋ちゃんの事が、ただ可哀想で…なんて励ましたらいいのかわからずに、洋ちゃんの見舞いに行く事すら出来ずにいたんだ…

そのうち洋ちゃんは退院したって親父から聞いて、学校も変わるらしいって…

…俺はもう洋ちゃんは普通の学校にすら通える事も出来なくなったんだと思って、益々顔合わせづらくなって…

でも、いつまでもそんな事してる訳にもいかないと思って、俺、洋ちゃんに会いに叔母さんの家に行ったんだ。

そんで洋ちゃんの部屋に入るなりさ?俺、驚いたよ、洋ちゃんってば筋トレやってたんだよ…無くした足の代わりの義足でのリハビリ中なのに…

無理するなよって俺が言ったら、そしたら洋ちゃん笑って俺に言ったんだ。

『貴司、車椅子でもバスケできるんだぜ?』

…って…

俺、驚いたよ、洋ちゃん、足無くしても全然変わってないって、全然可哀想なんかじゃ無いって。

洋ちゃんはそれでもバスケが大好きなんだって…

全然諦めてなんか無いんだって…」