区立体育館に着くと、貴司は以前練習をした体育館の扉を開けて。


そこには。


「………え?」

「な?…お前が興味ありそうな所だろ?」


大声を出しながら、コート中を走り回る車椅子の人々と、バスケットボール。


「……スゲー…」

「だろ?」


−−ピィィ−ッ!!


ホイッスルの音と共に車椅子の動きは止まり、それぞれベンチへと下がる車椅子。


どうやら紅白戦、前半終了みたいだ。


「来いよ」


貴司に促され、片方の赤いビブスの方に近付くと。


「洋ちゃん!」

「あ、貴司…」


洋ちゃんと呼ばれた若い男は、俺の顔を見るなり。


「あっ、佐野茜っ!」


俺の名前を呼びやがった。


「は?」

「あはは、貴司。ホントに佐野茜と同じ学校だったんだな?嘘っぱちだとか言って悪かったな?」

「ほらな?ホントだっただろ?球技大会だって優勝したんだぜ、な?茜?」


俺は状況が飲み込めず、呆然としていると。


「佐野茜…俺の事なんか覚えてないよな…」

「…あ、えーと……ごめん…」


車椅子の知り合いなんて思い付かなくて、俺はそう言うしか無かった。


「はは、だよな?もう何年も前だし…その頃は俺にも左足があったしな…」


見ると洋ちゃんの左足は太股辺りから下が無かった。


「……それ…」


足どうしたの?とは聞けずにそこを見つめていると。


「あ。コレ?事故だよ、中1ん時交通事故、もうグシャグシャ…で…切り落とした…」


太股を擦りながらそう言う洋ちゃん。


「…何年も前って?俺に会った事あるの?」

「うん。お前小5、俺小6ん時、ミニバス全国大会、決勝戦…そん時の対戦相手、俺」

「あ…洋ちゃん…確か…ヨースケ?」

「そう!洋介だよ!思い出したか?」


覚えてる……


ヨースケ…当時俺が知る限り、誰よりも高く飛んでいた…


結果、負けてしまったけど、それからの俺はますますバスケにのめり込んでいった…


「……洋ちゃん、久しぶり」

「おう、久しぶり、佐野…」