シロにお別れのキスをしてから佐野君のアパートを出る。

もう何度も通ったこの道も、佐野君と二人で手を繋いで歩いていると、それだけで特別な物になる。

深夜のコンビニ。
街灯に照らされた歩道。
二人でブランコに乗った公園。


「はは…スゲー星」

佐野君が夜空を見上げながらそう言って、私も同じように上を見上げた。

佐野君のバイクに乗っている時に見た時よりも、星の数が増えてるみたいな感じがした。

「わあ…ホントだ、凄いね…」

「今日は七夕だったな…あれ?日付が変わってるから、昨日か、はは」

ふふふ。佐野君、私が考えてた事と同じ事言ってる。

歩きながら二人で夜空を眺める。

「バイト…どうだった?今日は大変だっただろ?」

「ちょっと…大変だった、でも楽しい方が勝ってるかな?」

「続けられそう?」

「うん。働くって楽しいね?」

「疲れるけどな?…まあ、色々と勉強になる事もある、特に響屋は色んな客が来るから、それだけでも結構面白いな」

「今日は凄く賑やかだったね?」

「キョンちゃんとカケルさんのテンションがMAXだったからな…」

「あはは、そうだね?二人とも夢が叶って、凄く嬉しそうだった」

「カケルさんは良しとして、キョンちゃんには驚いたな…」

「私も…でも…恭介さんとアスカさんお似合いだよね?」

「はは、俺も前からそう思ってた…それとさ?…」


なんて。

帰り道は会話が途切れるのが勿体ない位に、私達は沢山話した。

なるべくゆっくり歩いたつもりなのに、直ぐにうちに着いてしまった。


「じゃ、また明日」

「……うん」


まだ離す事の出来ない掌を、佐野君がクイッと引っ張って、もう片方の腕を背中に回して、私をその胸の中に包み込んだ。


「おやすみ、奏…」

「おやすみなさい 、佐野君…」


お互い自然と唇を合わせて、ゆっくりと離れると。


「奏が部屋に入るまで見てる、もう行って?」

「…うん」


何度も振り返りその度に佐野君は微笑んでくれて、ドアを開けてまた振り返ると、最後に私に手を振って、来た道をまた歩き出した佐野君。


その背中を見送って、玄関のドアをパタンと閉めた。