佐野君のアパートのドアを開けると、鈴を鳴らしてシロが胸に飛び込んできた。
「シロ、ただいま、今日はごめんね?」
シロの額にキスを落とすと、二ャーと小さく鳴いて、スリスリと私の胸に顔を擦り寄せてきた。
「……シロはいいよな…」
佐野君が靴を脱ぎながらボソリと呟いたけど、私はよく聞き取れず。
「えっ?何?」
「…何でも…さ、早く上がって?」
「?…うん」
部屋に上がると佐野君は電気を点けて、テーブルに置いてある薄い雑誌を私に差し出した。
「これ、今日、実家から届いた」
受け取り見るとそれは【townapple】と書かれていて。
「あ、これ…あの時の…」
「そう、あん時の…写真載ってる」
「…佐野君、見た?」
「うん。見た、最後ら辺に載ってるから、見てみたら?」
「…うん」
私あの時、凄く恥ずかしくて、緊張しちゃってたから、絶対変な顔してる…
シロを床に放して、その場にペタリと座り雑誌を捲る。
すかさずシロが膝に飛び乗ってきて、丸まり蹲る。
雑誌の最後のページ近くに。
『街で見つけた、美男美女カップルspecial』
と言うキャッチコピーが載っていて、その言葉に赤面してしまいそうになる。
見開き一面に若い世代や年配者の男女の写真が沢山載っていて、私達の姿を探したけど、どこにも見当たらない。
「?…佐野君?どこにも載ってないよ?」
私がそう言うと佐野君は。
「次のページ、見てみて」
言われた通りにページを捲るとそこには…
「わっ、何これ?…」
『本日のベストカップル』と書かれていて、1ページまるごと私達の全身写真が載っていた。
「俺も驚いた、ははは」
佐野君は笑って私の隣に腰を下ろすと。
「こんなにデカく載るなんて思ってなかったよな?」
「……うん…」
佐野君に後ろから抱きしめられて、引きつった笑顔の私…
佐野君は凄くカッコよく写ってるのに…
それに比べて何?私の顔…
「奏、スゲー可愛く写ってる」
佐野君……
目が悪いの?…

