マスターさんにお礼を言って響屋を出ると、拓也君が男の人の車に乗って美樹ちゃんを迎えに来た。
話しによると同じアルバイト先の人で、家が近いと言う事もあって、帰りはその人が送ってくれているらしい。
「じゃ、かなちゃん、佐野君、明日学校でね、春名さん、翼君、お疲れ様でした」
「うん。また明日ね、おやすみ、美樹ちゃん」
「お疲れ〜、遅くまでごめんね?明日も頑張ろうね」
「はい。おやすみなさい」
手を振り車を見送ると、次にタクシーが来て、春名さんと翼君がそれに乗り込み、また手を振ってそれを見送った。
「俺達も帰ろうか?」
「うん」
スカートでバイクに乗るのは抵抗があったけど、佐野君のGジャンが上手い具合にスカートが開かないようになっていて、これなら大丈夫だと少し安心した。
佐野君がヘルメットを被せてくれながら。
「…ちょっとだけ、うちに寄らない?見せたい物があるんだ」
「え?うん。いいよ、何を?」
「帰ってからのお楽しみに」
そう言ってヘルメットをポンポンと軽く叩く佐野君。
…何だろ、気になるな?
でも、佐野君のアパートに行けばわかるか。
今日は忙しくてシロにも会えなかったし、少し遊んであげよう。
お父さんには打ち上げで遅くなるってメールしたし、大丈夫だろう。
佐野君がバイクに股がり、後ろから佐野君に腕を回し、ギュッとしがみつく。
エンジンをかけて、佐野君はいつものようにアクセルを二三度回すとバイクを走らせた。
来る時は沢山の人達で賑わっていたこの通りも、時間も日付が変わってしまっているからか、人通りもまばら。
バイクは繁華街を抜けて国道へ。
夜空を見上げると、梅雨の晴れ間のこぼれ落ちそうな程の天の川。
そう言えば今日は七夕だったな。
ん?…日付が変わってるから昨日か。
織姫と彦星は一年に一度の出逢いを果たして、またお互いを想って一年間を過ごすのかな?
側に居なくて不安になったりしないのかな?
でも、お互いを信じているから。
愛し合ってるから。
離れていても、大丈夫なのかな?……

