「アスカさん、キョンさんなんかのどこがよかったの?」

「…なんかって…美樹ちゃん…何気に酷い事言うね…」


恭介さんはカウンター後ろのテーブル席で、カケルさん達と盛り上がっていて。


そんな恭介さんに聞こえないように、美樹ちゃんはアスカさんに聞いていて、目の前に居る佐野君にはそれが筒抜けみたいで、グラスを拭きながら、少しだけ身を乗り出していた。


「美樹ちゃん、恭介さんは優しい人だよ?それに弁護士になるなんて、凄いじゃない…そんな言い方したら可哀想だよ…」


…なんかって…ホントに何気に失礼だよ…美樹ちゃん…

「あはは、いいのよ、奏ちゃん…その通りなんだから」

「じゃ、なんで好きになったの?」

美樹ちゃんはアスカさんに身体を寄せて、アスカさんの答えを待っている様子。

私もその理由を知りたくて、アスカさんの側に身体を寄せた。

私達二人に詰め寄られる形になって、困ったような、はにかんだような顔をしていて。

「…なんだろね?…絆された?洗脳された?…みたいな?…あたしにもよくわかんないや…あはは」

アスカさんは両手で持っているグラスを見つめると。

「…気付けば…落ちてたって…感じかな?…」

「…ふぅーん…そっか…ま、人を好きになるって理屈じゃ無いですからね…わかる気がします…でも、アスカさんとキョンさん…以外とお似合いかも?」

「ふふふ、どうだろ?…あ。そうだ、あたしね?お店、今月いっぱいで辞めるから」

「え?辞めるの?アスカちゃん」

佐野君はグラスを拭いてた手を止めて。

「うん。今日決めた。もうがむしゃらに働く必要もなくなったし…あたしね?弟が二人居るんだけど、二人ともあたしに黙って大学辞めちゃってて…兄弟で事業始めちゃってたの…ネット販売で、顧客が欲しがってる物探したり…売ったり?買ったり?仲介みたいな感じ?あたしはIT系はダメだからよくわからないんだけど…せっかく大学続けさせてあげてたのに…無事に卒業してほしかったな…」

「……弟さん達は、そんなアスカちゃんを、早く楽にしてあげたかったんじゃない?…大学なんて、後からだって再編入出来るよ…」


佐野君はグラスをしまいながらそう言うと、アスカさんは、そうだねって呟いて笑っていた。