「奏ちゃん、美樹ちゃん。二人とも待ってたよ〜♪」
私達を二人いっぺんに抱きしめるカケルさん。
「か、カケルさん…今日からよろしくお願いします」
「……カケルさん…セクハラですよ?」
「ああ…ごめんね?嬉しくてさ♪こっち来て?他のスタッフ紹介するから」
カケルさんは私と美樹ちゃんを促し、奥のステンレスの調理台や業務用のオーブン、焼き釜、フライヤー等が並べられた、まだ出来立てのピカピカの厨房に私達を案内してくれた。
私達は学校が終わって直ぐに、ここ【honeyfactory】やって来た。
店内はカフェスタイルになっていて、窓越しにあるカウンター席と、ホールにはテーブルが10数脚。
ログハウス風の木造りの明るい店内。
厨房に入ると白い作業着を着た若い男性二人と女性一人が居て、彼らがこの店のパティシエなんだと伺える。
「紹介するね?奥村奏ちゃんと松本美樹ちゃん♪二人とも見ての通り美少女高校生♪これでうちの店は繁盛間違いなし♪あははは」
上機嫌のカケルさん。
「間違いなしって、オーナー…二人とも固まってるよ?あ。俺チーフパティシエの高宮敦です、よろしく。ちなみに30歳、新婚ほやほや」
「ほやほやって…何気にのろけないで下さいよ?高宮さん…俺は近藤翼って言います、よろしく。24歳、彼女募集中!」
「あはは、自分の宣伝しないでよ?わたしは木村春名って言います、よろしくね?奏ちゃん、美樹ちゃん」
「「よろしくお願いします」
美樹ちゃんと声を揃えて同時に頭を下げた。
「あと何人かバイト入れるつもりなんだ、ね?二人とも誰がバイト探してる子、紹介してよ?」
にこやかに語るカケルさんに美樹ちゃんは。
「紹介料貰えますか?」
「あはは、勿論。一人につき一万円!」
「乗った!」
「但し条件がひとつ…美少女かイケメンである事!」
「……成る程、さすがカケルさん、腹黒いですね?ふふふ…」
…いつもの美樹ちゃんじゃない…
「茜を引っ張って来れたら10万出す!」
と、美樹ちゃんの目の前で、両手を広げるカケルさん。

