バスから降りて、コンビニを目指して歩いていると、誰かに肩を捕まれた。


佐野君?


振り返り見てみると見知らぬ男性。

「こんにちは♪」

男性はニッと笑うと、

「君、今1人?よかったら俺とカラオケでも行かない?」


…なんてベタなナンパ…


「…今から待ち合わせですから…」

私が男性に言うと。

「あちゃ〜!残念!でも時間まで俺と話ししようよ♪」

「…時間ないですから」

「そっか、じゃあさ、今度遊びに行こうよ?君のメアド教えてくんない?」

…は?

何でいきなり出てきた全く知らない人に、メアド教えなきゃいけないんだろう?

男性は私の腕を掴んできた。

「ね?教えてよ?」

「離して下さい!」

腕を振りほどこうしたけど、男性の力には勝てず、振りほどけない。

「あはは。怒った顔も可愛い♪」

何?この人?頭おかしいんじゃない?

「いい加減にして!離して!」

「教えてくれたら離してあげ……グェッ!」


男性は突然後ろから首を締め上げられた。


「……奏に触るな…死にたいの?」


男性の後ろに佐野君が居た。


「…佐野君」

「奏。大丈夫?」


と佐野君はニッコリと笑いながら男性をさらに締め上げた。


「…うぅっ…は…なぜ…」

「…あ?離して下さいだろ?」

「…はなじで…グダザイ…」

男性は苦しそうに、もがきながら声を絞り出す。

佐野君はやっと手を離した。


「…ゴホッ…ゴホッ」

男性はしゃがみこみ、激しくむせ変える。

苦しそ…

佐野君。
やりすぎだよ…

「…早く消えろ」

佐野君がボソリと呟くと、男性は「ヒィッ!」と声を出して、逃げ去って行った。

私は呆然とそれを見送った。

「さ。行こうか?」

何事もなかったかのように、佐野君は私に手を差し出す。


私は差し出された手を見つめて、キョトンとしていると、佐野君は私の手を取り歩き出した。



…!…えぇっ!?手!

手っ!繋いでる!


少し先を歩く佐野君の背中を見つめながら、私は全神経が繋がれた掌に集中していた。