「じゃ、また明日。学校でね?」


シロを抱えて恭介の車の助手席の窓越しで。


「うん。結局遅くなっちゃったな…」


「…いいよ、どうせお父さんもまだ帰って無いだろうし…」


「…まだ、怒ってる?」


「え?…何が?」


「父さんと…喧嘩…」


「…今日電話で話したから…もう大丈夫だよ…」


「そっか…」


「あ。佐野君、シロ、貸して?」


奏が助手席の窓から手を差し出し、シロの頭にキスを落とした。



「シロ、おやすみ、また明日ね」



俺にもおやすみのキスをしてくれ。



「あはは、奏ちゃん、茜が物欲しそうに見てるよ?茜にもしてあげたら?」


運転席から恭介の冷やかすような言葉に奏は。


「!っ、い、嫌ですっ」


…そんなに嫌がる?
泣いちゃうぞ?俺…


「あはは、可愛いなあ、奏ちゃんは、じゃ茜、おやすみ。また明日な」


「うん。おやすみキョンちゃん、シロの事、ありがと、あと奏の事も」


「いいって、またなんかあったら預かってやるよ、シロ?またうちに来るか?」


恭介がシロの頭を撫でると、ニャーと小さく鳴いた。



奏からシロを受け取ると車は走り出し、窓から手を振る奏にシロの前足を振りそれに応える。



雨は小降りになっていて、暫くその場に立って、恭介の車のテールランプが見えなくなるまで見送った。



ついに梅雨入りしたとさっきニュースでやっていて、少し気持ちが滅入る。



……このポンコツの膝で…

バスケなんか出来るもんか…



この期に及んで、まだバスケの事を思い浮かべる自分に苦笑いしつつ部屋に戻る。