「あ。かなちゃん、丁度よかったぁ」
少し息をきらして図書室の扉を開けると、カウンターの中から、美樹ちゃんが私に手招きした。
松本美樹ちゃん。
1年の時同じクラスだった私の唯一の女の子友達。
美樹ちゃんは図書委員で、私は佑樹を待ってる事が多いから、よく放課後は図書室に寄って帰っていた。
美樹ちゃんがカウンター係をしている時に、よくお喋りするようになって仲良くなった。
ショートカットが似合うとても明るい子。
「何がよかったの?」
私はカウンターに近付いて、美樹ちゃんに聞いてみた。
「ちょっとカウンターに居てくれる?あたしちょっと先生に呼ばれてて、今のところ誰も居ないからさ、いいかなぁ?」
美樹ちゃんの代わりに何度かカウンター係はやった事がある。
図書室の常連でもある私は受け付けも慣れたもの。
「うん。いいよ、行って来なよ」
「ありがと。かなちゃん、じゃあ、行ってくるね。なるべく早く戻るから」
美樹ちゃんは手を振り、図書室から出ていった。
私はカウンターの中に入り、パイプ椅子に腰掛け、鞄から文庫本を取り出し、読み始めた。
…ゴロゴロ
ホントに誰も居ないな。
……静か。
……ゴロゴロ…ゴロゴロ…
………雷。
随分近くなってきたな……
両膝の上に文庫本を置いていたら、手が微かに震えていて、それが膝に伝わってくる。
…嫌だな。怖い…
…ガラガラッ!…ドカッ!!
「!!ひゃあっ!」
いきなり大きな音がして、図書室が一瞬真っ白に染まった。
やだっ!
怖いっ!
文庫本を放り出し、その場に耳を塞ぎうずくまる。
…ドカッ!ガラガラッ! !
やだやだやだ!
早く遠くに行って!
目をギュッと瞑り、さらに近く小さくうずくまる。
「…怖いよ…」
涙が滲んでくる。
「…こうすれば少しは怖くないだろ?」
何かが頭の上に掛けられて、誰かにギュッと後ろから抱き締められた。
この声。
「……佐野君」
「…様子、おかしかったから…つけてきた…」
佐野君はさらに腕に力を込めた。