昼までは晴れてたのに、だんだんと雨雲が広がっていき、その日の放課後、佐野君が言った通り本当に雨が降りだした。


窓の外を見ると、微かにゴロゴロ…と雷が近付いてくる気配がする。


嫌だな。


私は雷が大嫌い。


子供の頃、目の前で雷が落ちたのを見た事があるから。


幼稚園の時、公園で遊んでたら急に雨が降りだして、他の友達は走って先に家に帰って行ったんだけど、私は濡れるのが嫌で、木の下で雨宿りしてたら、公園の中央に置かれていた滑り台に、物凄い音がして雷が落ちた。


まだ幼かった私はそれが雷だとは思わず、空から怪物が何かが襲って来たのかと思った。


歪んで真っ暗に焦げて煙を上げてた滑り台。


それが私には見た事もない生き物みたいに思えてとても怖かった。


それ以来私は雷が激しく鳴ると、その時の事を思い出してしまって、身体が震えてしまって動けなくなる。


どうしよ…


佑樹は今日も生徒会で遅くなる。


急いで帰れば間に合いそうだけど、でも待ってろって言われてるし。


本格的に鳴り出す前に帰りたいな…


「奥村さん?顔色悪いよ?具合悪い?」


横から佐野君が声をかけてきた。


「えっ?あっ、別に何ともないよ?」

「…ホントに?」

「…うん…私、図書室に行かないと、今日返却日なんだ、じゃあね。佐野君」

「…あ、うん。じゃあね」


佐野君は何か言いたげな顔をしていたけど、私は鞄を掴むと教室を出た。


変に思われたかな?


でも佑樹を待ってるなら、教室に居るより図書室の方がいい。


本も返却しないといけないし、1人で教室に居るよりかは少しはマシかな?


教室と違って図書室は窓も本棚に隠れてるし、あまり期待出来ないけど…


廊下を歩きながら窓の外を見る。


東の空が微かに光った。


嫌だな。


もうあんなとこまで来てる。


早く行こう。


教室がある第二校舎から渡り廊下を渡り、教科室がある第三校舎の図書室へと向かう。


雨降りの三階の渡り廊下を走って渡る。


……ゴロゴロ…


一瞬足がすくみそうになったけど。


急いで図書室まで走る。