暫く佐野君は私の胸に顔を埋めたまま、
「………………っ、くそっ!」
そう言い残し勢いよく立ち上がっり、私は慌てて起き上がり洋服を整えた。
佐野君に流されそうになって、まだぼんやりとする頭をスッキリとさせる為に頬を両手で叩く。
……ちょっと痛かった…
「茜〜?居ないのか〜?」
佐野君がドアをバンッと激しく開ると、ガツンと何かが当たるような音がして。
「ふぎゃっ!!」
「キョンちゃん俺に何か恨みでもあるの?」
「いってぇ〜!痛いだろっ!茜っ!」
「…それ位、今俺が受けた心の傷の方が遥かに痛い」
「はあぁ?お前なに言ってんの?」
「あのっ、恭介さん、おはようございます」
佐野君の横から顔を出しすと、恭介さんは額を擦りながら、
「あ♪奏ちゃ〜ん♪おはよう。今日も可愛いね♪」
「上がって下さい」
「うん。…おい、茜退けよ、入れないだろ?」
「……覚えてろよ…」
「は?お前さっきら何怒ってんの?」
「……何でもないよっ」
佐野君はズカズカと部屋に戻ると、ベッドの上に突っ伏してしまった。
……佐野君。そんなに怒る事?
私は急に恥ずかしくなってしまって、
「お、お茶入れますね?」
慌ててキッチンへ。
「お構い無く〜、お邪魔しま〜す♪へぇ、結構広いじゃん」
恭介さんはラグの上に座るとキョロキョロと部屋を見渡した。
「おっ、お前がシロ君か、おいで〜♪」
恭介さんが手を差し出すと、シロはチリン、と鈴を鳴らして恭介さんの膝に飛び乗る。
「ホントに真っ黒だな、ジジみたい。可愛いね?」
恭介さんの膝で丸くなりゴロゴロと喉を鳴らすシロ。
よかった直ぐになついた。
恭介さんも猫の扱いに慣れてるみたいだし、これなら安心。
テーブルに冷たいアイスティーを置きながら、
「恭介さん、わざわざ来て下さって、ありがとうございます。シロお願いしますね?」
「うん。心配しないで、責任を持って預かります、旅行楽しんで来なよ?」
……旅行じゃ無いんだけど…
まあ、いいか…

