佐野君はぐっすりと眠っている様子。

起こしてしまうのは可哀想。

腕は私の背中に回されていて。
お互い横向きに向かい合わせ。


………動けない…


「……ん〜」


佐野君は顔を近付けてきて、頬を私の頬にくっ付けてきた。
さらに腕に力が入り、足まで巻き付いてきて。


……く…苦しい…


−ピピピ−ピピピ−ピピピ…


枕元の携帯のアラームが鳴り出した。

「…う〜…」

佐野君は片腕を離すとしかめ顔で携帯を開きアラームを止めて、それを手に持ったまま、

「…ぅ〜ん…」

起きるかと思ったけど、まだ起きない。

とりあえず片腕は離されたので、身体を捻って脱出を試みる。

…よいしょ。
あれ?足から抜け出せない。
……う〜ん……
…はあっ、…しっかり巻き付いてる。

もう一度…うぅ〜〜っ……


「……奏?……」

あ。

「…ごめんなさい、起こしちゃった?」

「……奏ぇ〜…」

佐野君はさっきよりきつく私に抱きついてきた。

「……佐野君、寝ぼけて…んっ…」

唇を塞がれてしまった。

佐野君はさらに深く、舌まで絡めてきて、服の中に手を忍ばせてきた。

背中に手を這わせられて、ゾクリとしてしまう。

唇を離すと次に首筋に。

…佐野君?寝ぼけてるの?

「っ……佐野君っ、起きてっ!」

「はえっ?」

佐野君はガバッと顔を上げて、両手をついて身体を起こした。

その腕の下に居る私を見下ろすと、

「…え?…奏?…何でここに?…夢?」

「…夢じゃないよ…おはよう、佐野君」

「…あ…おはよう、でも、奏、何で俺の下に?…」

「…佐野君が…引っ張ったんじゃない…寝ぼけて…」

すると佐野君は、

「えぇ〜っ?マジかよ?…俺なんかした?」

動揺する佐野君が可愛くて、

「………した」

「え?何した?」

「………教えない」

「は?」

「…いっぱい…した」

「…マジで?…」

「…うん」

「あぁ〜〜っ!何も覚えてないっ!勿体ねぇ!って、違うっ!ごめん!奏っ」


私は可笑しくて笑いだした。