諦めない人間か……

うん。

それならわかりやすい。

「諦めない…か…」

シンプルだけどそれはかなり難しい事でもある。


「それは何かひとつでもいいんだぞ?それが達成出来た時は、人として成長した証なんだからな」

「ひとつでも?」

「そうだ、あまり欲張り過ぎても自分自身がダメになる、中途半端で終わってしまったら後悔もするし、それまでの努力が時間が無駄になってしまって、やる気も無くなるだろ?」

「…努力しても、報われなかったら?」

「それでも諦めないのが努力するって事だろ?まあ、自分自身のスキルもあるし、それに見あった、少しでも上の目標を持つ事も大事だけどな、茜は今何か目標あるのか?」

「…俺の目標?」

「そう。やりたい事とか、今夢中になってる事」

「やりたい…夢中………奏?」

「ははは。それも確かに夢中になるって事だけどな。言い方変えよう、奏ちゃんの事忘れる位夢中になる事は?」


奏の事を忘れる位夢中に……


「……バスケ」


勝手に口が動いた。


「…まだ…やりたいんだろ?」

「…いや、俺がやるんじゃ無くて…指導する方だよ…俺。教師になるんだ、そんでガキ共にバスケ教えんの…」

「茜、教師になるの?うわっ!女生徒食いまくりっ!変態っ!獣っ!」

片付け終わった恭介がカウンターから身を乗り出してきた。

…恭介…お前の頭の中が変態で獣だ。

「…キョンちゃんは、何かやりたい事あるの?」

「俺?俺は弁護士」

は?弁護士?

そのキャラから想像つかない言葉に絶句していると、

「…俺の親父な、冤罪で会社クビになって…自殺したんだ…」

恭介は椅子に腰掛ける。

「会社の金横領したって…そんで死んでから、無実が証明された…」

「…キョンちゃん」

「おっと。同情すんなよ、腹立つから」

同情なんかしない、同情される屈辱はよく知ってる。

「…だからさ、俺は弁護士になるって決めたの、司法試験は誰だって受けられる、二十代で必ず受かってみせる、これでも俺。昼間はずっと勉強してるんだぜ?」


そう言って笑う恭介は自信に満ち溢れていて、羨ましい位だった。


きっと受かるよ、キョンちゃん。