「…カケルさん、言い方が紛らわしい上に回りくどい…」
『あはは。そうか?動揺する茜期待してたんだけど』
「…何それ?」
『お前ビル前でアスカちゃんと話してた時、無茶苦茶真剣だったて聞いたからさ、そんな茜を見てみたいと言う、俺の純粋な好奇心だ、あはは』
「カケルさん、冗談が過ぎるとその内本気で刺されるよ?」
『そうか?刺されるのはもうゴメンだ。あはは』
……やっぱり刺されてやがった。
ホントに食えない男だ。
『て訳で、奏ちゃんは俺がいただくから』
「…その言い方やめろ」
『はいはい。責任持って雇わせてもらいますよ』
カケルの話は自分が新しく出す店に奏をアルバイトとして雇うらしい。
ビルで偶然奏に会ってその話をしたら、お互いの意見が一致。
奏はこのところ本気でバイトを探していて、やらなくていいって言ってるのに、言う事を聞いてくれない。
意外と頑固な所がある。
でも案外これでよかったのかも、全然知らない所で働くよりも、カケルとは知り合いだし、奏もやりやすいだろう。
それにケーキショプだったら男の客は来ないだろうし、俺的にはありがたかったりする。
奏目当ての客が来たら困るだろ?
「いつオープンするの?」
『7月7日、その前に研修とかしてもらうから、来週位から出てきてもらうつもり』
「ふ〜ん」
『心配か?』
「少し」
『大丈夫だって、奏ちゃん見た目より意外としっかりしてる』
「わかってる」
『それでも倒れそうになった時は、茜、お前が支えてやれよ?』
「うん」
『ただ大切にするだけじゃダメだ、優しくするだけなら誰だって出来る、それ以前にもっと自分自身を大きく成長させて、その人の痛みや苦しみを、全て引き受ける位の人間にならないとな?』
いつになく真剣なカケルの話に聞き入ってしまう。
「うん。わかった、カケルさん、今日はありがと、奏の事よろしく」
『ああ。お礼は茜の一日出張ホストでいいよ、あはは、じゃあな』
…やっぱり食えない男だ…
電話を切り夜空を見上げるとそこには綺麗な三日月。
全てを引き受ける人間か…

