暫く泣きじゃくる奏を抱きしめ、頭を撫でてやっていると、奏も徐々に落ち着きを取り戻してきた。


「足…ちゃんと手当てしないとな?」

「……うん」

クローゼットの中から薬箱を出して奏の足を手当てしてやる。

「…ありがとう、佐野君」

「…奏…携帯電源切ってるだろ?美樹ちゃんとかも心配してるぞ?連絡したら?」

「うん」

言うと奏は枕元に置いてあるバッグから携帯を出し電源を入れると、途端にそれが振動し出して受信ランプが点滅する。

「………………」

無言でそれを見ていく奏。

全て見終わったのか携帯を耳に当てる。

「ごめん、佐野君、美樹ちゃんにだけ電話するね?」

俺は頷きながら足の手当てを続けた。

「あ、ごめんね?美樹ちゃん、心配かけて……うん、大丈夫……今?今は…佐野君のうち……うん……うん……カケルさんから?…………そう………うん、私、それでうちに帰りたくないの………うん、だから美樹ゃやんのうちに今日泊まらせて?……え?………それは……あっ、美樹ちゃんっ」

切られたのか携帯を見つめる奏。

「…美樹ちゃんちに泊まるの?」

「そうさせてもらおうと思ったんだけど…」

「…ダメだって?」

「うちに泊まる事にしといて…そのまま佐野君のうちに泊まれって…電話…切れちゃった…」

それは別に構わないけど、むしろ嬉しい位だ、でも…

「うちに帰った方がいいよ、父さんだって心配してる…」

「嫌っ!うちには帰りたくないっ、お父さんの顔見たくないっ」

…かなり怒ってんな…どんな喧嘩してんだよ…

「…でも、かなり心配してるみたいだぞ?アスカちゃんが言ってた、だから今日は帰った方がいい」

「…佐野君、お願い、今日泊めて?」

…そんな目で見るなよ…
只でさえ我慢してるのに…
それにその格好、目のやり場に困る…

「…明日は朝一で出掛けよう、うち行く前に遊園地にでも行こうか?だから今日は帰ろう?な?」

「…明日?朝から?」

「うん」

「遊園地?」

「うん。デートしよう」

「…デート?」

「うん。沢山遊ぼう」

「…行きたい、佐野君と遊園地」

「だから今日は帰ろう?」


奏はコクリと頷いた。