駐輪場にバイクを停めて部屋の窓を見上げる、電気は点いてない。

アパートの階段を駆け上がり、ドアに手を駆けると鍵は開いていて。

ドアを開け中に入ると、薄暗い部屋の奥のベッドに横たわる人影が見えた。

ベッドに近付きそれを確認して、ヘナヘナとその場に座り込み、安堵のため息をつく。

「………奏…」

よかった。
とりあえず、見つけた。

もう一度安心したくて奏の顔を覗き込んだ。

よく見ると奏は真っ白なドレスみたい服を着ていて、その閉じた瞳は涙で濡れていて。

それはまるで月明かりに照らされた天使が疲れて眠ってしまったみたいに、物凄く綺麗で儚げだった。

泣き疲れて眠ってしまったんだろうな…

時々肩をピクッと震わせしゃくり上げていて、いかに奏が悲しい思いをしたのかを物語っていた。

このまま寝かせといてやりたいけど、そうも言ってられない。

父親だって心配してる筈。

とりあえず美樹とアスカに奏を見付けたとメール。


…確か奏は裸足で走って行ったって…

奏の足が心配になり見て見ると、小さな擦り傷や痣が出来ていて、ドレスも少し汚れていた。

立ち上がりタオルを塗らして足を綺麗に拭いてやっていると、

「…佐野…君?…」

奏は横になったまま足元に居る俺を、虚ろな目で見つめていた。

「起きた?足、痛いだろ?」

「…あっ、ごめんなさい、私、ベッド…汚しちゃった?」

慌てて身体を起こす奏。

「いや、そんな事無いよ…」

「…あの…私…自分でやるから…」

「いい…俺がやる」

「……でも」

「いいから…」

暫くお互い無言で奏の足を綺麗に拭いてやる。

「……よし、綺麗になった、後は消毒と絆創膏…」

「…あの、佐野君…何で私がここに居るのか、聞かないの?」

「アスカちゃんからバイト先に電話があってさ…」

アスカから聞いた話をそのまま奏に話した。

奏はうつ向き小さな声で、

「…迷惑かけて、ごめんなさい…」

泣き出してしまった。

俺はベッドに腰掛け奏を抱きしめる。

「迷惑なんかじゃないよ…でも、スゲー心配した…」

奏も俺にしがみついてきて、

「…ごめん、なさい」

さらに泣き出した。