「…失礼します」


言いながら職員室の引き戸を開け、中に入り担任の先生のデスクへ。


「先生、何の用事ですか?」

「おっ、奥村、ちょっとここ座って」

先生はノートパソコンから目を反らさないで、隣の空いているデスクに座るよう促す。

「…はい」

言われた通りに座って暫く待っていると、先生はパソコンのエンターキーを押して、

「よしっ、と…」

パタンとそれを閉じた。

「あ。今進路指導室空いてますよね?」

向かい側に座る他の先生にそう聞いて、

「はい。空いてますよ」

「そうですか、ありがとうございます、奥村。進路指導室に行こうか?」

「?…進路指導室、ですか?」

「まあそう構えるな、大した事じゃないから、ほら、行くぞ」


先生の後について職員室の隣にある進路指導室に入る。


「座って」


先生に言われるまま長テーブルに先生を挟んで腰掛けた。


「…先生、何ですか?」

私はここに連れて来られた訳を早く知りたくて、先生に聞いてみた。


すると先生は一枚のプリントを私の目の前に置き、見るとそれは私が書いた進路希望調査表。


「…奥村…専門学校に行きたいのか?」

「…はい…そうですけど」

「去年は大学進学だったよな?」

「はい」

「何故変わったんだ?」

「…将来、美容師になりたいんです、私」

「……そうか、美容師か」

「はい、それが何か?」

「いや、勿体ないなと思って…」

「勿体ない?」

「奥村は学力もこの学校でトップクラスだ、全国模試でもかなりいい位置に居る、恐らくT大だってストレートで合格出来る、だから、非常に勿体ないなと…」

「…でも、私は美容師になりたいんです」

「…そうか、まぁ…まだ時間はある、じっくり考えてみてくれ、悪かったな、わざわざ呼び出したりして、もう行っていいぞ?」

「はい、失礼します」


立ち上がり先生にお辞儀をして、進路指導室を出て教室へと戻る。


…進学校だから、進学率上げたいんだよね…

それはわかるけど、進路なんて個人の自由じゃない。

私は美容師になりたいの。


…それ位の夢……


叶えさせてよ……