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「茜っ!本日三人目の挑戦者だ!」


宮地君の声が教室に響き渡り、クラスのみんながそちらに目を向ける。

見ると顔を真っ赤にしてうつ向いている女の子、ネクタイの色からして一年生。

呼ばれた当の佐野君はと言うと、

「佐野君、起きて、佐野君っ」

机の上に突っ伏して居眠りしていた。

肩を揺すり、起こしてあげると。

「…んあっ?…え?…何?…」

「佐野君…あそこ」

戸口を指差す。

「は?あそこ?」

寝ぼけ顔で戸口に目をやる佐野君。

「茜…お前また寝てたの?ほら今日三人目…」

「…あ―…うん…」

眠そうにあくびをして、頭をかきながら戸口へと向かう佐野君。

……今日で告白されるの三人目になるね?佐野君…


球技大会の翌日。
佐野君は前日の真っ赤な髪の毛から、今度は佐野君の瞳と同じ色の、鮮やかな琥珀色の髪になって登校してきた。


金色の佐野君
赤い佐野君
琥珀色の佐野君。


短期間でこんなにも色々な佐野君を見れて凄く嬉しくて。

その琥珀色の髪は、只でさえ大人っぽい佐野君をさらに素敵にしてて、金より赤より似合ってるような気がして、いちいち私をときめかせる。


それは他の女の子達も一緒で、球技大会が終わってから暫く経って、腕の怪我も完治したけど、毎日のように女の子が佐野君に告白しにやってくる。


でも佐野君は誰の告白も受けないで、全て断っている


その度に、嬉しいような、悲しいような、複雑な気持ちが私を襲ってくる。


…大事な事は置き去りにして。
それでも佐野君の側に居たくて…
時々胸が張り裂けそうになる…


「…ん…奥村さん」

呼ばれてハッと我に返ると、沢田さんが私の顔を覗き込んでいた。

「…あっ、何?」

「どうしたの?ボーッとして?」

「え?あ、ちょっと考え事してて、あはは。何?沢田さん」

「あのね?担任が呼んでたよ?職員室に来るようにって」

「うん。わかった、ありがと、沢田さん、ちょっと行ってくるね?」


何の用事だろ?もうすぐLHRなのに、放課後じゃダメなのかな?


そんな事を考えながら職員室へと向かう。