「…こっち、見ないでね?」
……努力する。
「……絶対見ないでね?」
……多分。
背後で奏の服を着る気配を感じながら、シロを膝の上に抱えていた。
さっきはあんなに大胆だったのに、今さら恥ずかしがる奏の事が可愛くて仕方ない。
思い返しては何度もニヤケてしまって、恐らく物凄くだらしない顔をしているに違いない。
「…もう…いいよ…」
振り返ると制服をきちんと着てベッドに腰掛けている奏。
「シロ、おいで」
奏がそう言うとシロは俺の腕をすり抜けて、奏の膝に飛び乗った。
「シロにもプレゼントがあったんだよ、忘れる所だった」
言うと奏は制服のポケットから小さなベルトを取り出した、微かにチリン、と音がして、シロの首にそれを着け始めた。
「首輪?」
奏の隣に座りそれを覗き込む。
「うん。可愛いでしょ?ほら」
シロを抱えて俺の方に向け、見ると黒いベルトに小さな白い鈴が付いていた。
「はは。ホントだ、可愛いよ…」
「この音が可愛くて、それに白いし、ふふふ、シロ、似合ってるよ」
とシロの頭にキス。
……シロ。
お前は一体何回奏にキスを貰った?
俺なんか数える程しか、奏からキスしてもらった事無いんだぞ?
……ちくしょう。
「…あ、佐野君、シロ持ってて」
奏はそう言うとポケットから携帯を取り出した。
「…電話?」
「ううん、お父さんからメール…」
開いて見る奏。
「お父さんまだ新幹線の中だって…会社に寄るから帰り、遅くなるって…」
……なんだと?
「…だったらさ…」
シロを床に放すと奏を引き寄せ、再びベッドに横になる。
「……もう一回…する?」
と奏の瞳を覗き込む。
「えっ!…あの…えっと…」
「はは。冗談だよ」
そう言って奏の額にキスを落とす。
「…な、なんだ、冗談か…はは…」
「あれ?もしかして…して欲しかった?」
「!っ…違っ!」
真っ赤になる奏。
……この生き物……
…もう…ヤバい位に可愛いんですけど…

