アパートのドアを開けると、
「シロ、ただいま」
奏はシロを抱えて額にキスを落とす。
……なんて羨ましいんだ!
と心の中で絶叫する俺。
ただいまのキスなんて、誰しも一度は夢見る、裸エプロンの次に匹敵する男達の空想(妄想)…
「…いつもそれ、やってるの?」
「え?何を?」
「シロに、デコチュー」
「うん」
そんな、なに当たり前の事言ってるの?的な目で俺を見ないでくれ。
……泣きたくなるから…
「シロ、お水代えようね」
奏はそそくさとシロの世話をし出した。
「……俺、シャワー浴びてくる」
そう言い残しバスルームへ。
膝に巻かれたテーピングをバリバリと剥がす。
ガチガチに固められた膝に血液が順調に流れ出し、すうっと解放されていくのがわかる。
軽く屈伸してみる。
……大丈夫だ…
痛みが走るかと思ったけど、微かに熱を持ったように感じるだけで、暫くアイジングすれば問題なさそうだ。
テーピングは自分で巻いても上手くいかない。
櫻井先生に感謝だな……
手早くシャワーを済ませてバスルームを出ると、シロは奏の膝の上。
「…シロ…ちょっとどけ…」
シロの首根っこを摘まんで奏の膝から下ろし、ごろりとフローリングに横になり、俺の頭をそこに乗せた。
「…あの、佐野君…」
「ん?何?」
「シロ、怒ってる…」
見るとシロは俺の腹に猫パンチ。
…その程度の攻撃…
効かねぇな…ははは
「…優勝したらご褒美、だろ?」
「……これが、ご褒美なの?」
「うん」
屋上で奏に膝枕してもらった時は寝ぼけてて、あんまり覚えて無かったから、もう一度やって欲しがった。
たっぷりと堪能してやる。
「佐野君、これ…」
奏の膝で寝そべる俺の目の前に小さな小袋を見せる奏。
「何?これ?」
「遅くなっちゃったけど、誕生日プレゼント…」
「マジで?開けてもいい?」
「…うん」
寝そべったまま袋を開けて中身を取り出すと、
「…ピアス?」
「うん、赤い石みたいだけど、珊瑚なんだよそれ、綺麗でしょ?佐野君には…赤が似合うから…へへ…」
そう言ってはにかむ奏の頬も少し赤い。