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昼休み。
視聴覚室のドアを開けると佐野君は、テーブルの上に左膝を抱えて座り込んでいた。


なぜここに来たかと言うと、またもや授業中佐野君からのメールで、昼休みに来れるようならここに来て欲しいと。


私は早めに昼食を済ませて、なるべく誰にも見つからないように気を付けてここに来た。


「…鍵、閉めて」


私は言われた通りに鍵を閉める。


「…はは。来てくれた」

「…うん、来ちゃった」

私は佐野君が座るテーブルの横に寄りかかる。

「昨日もバイトだったの?」

「うん、ほぼ毎日…」

「…大変だね」

「そうでもない、バイト楽しいからね」

「…そっか」


佐野君とはあれから時々こうやって二人で話すようになった。


メールのやり取りもしてる。


何気ない会話だけれども、私は佐野君と話すのが楽しかった。


友達も少ないし、あまり私に話しかけてくる人は少なかった。


地味で暗いからかなぁ?
と、少し落ち込む。


佐野君と話してると何だか落ち着く。


友達が居たらこんな感じ?
でも佐野君は友達とは違う、


私の浮気相手。


佐野君もそう思っているはず。


そう考えると何だか心が重くなる


「…今度さ、どっか遊び行こうか?」

「えっ?」


佐野君の突然の言葉に驚く私。


「ガッコだとあんまゆっくり話したり出来ないし、奏がよければ、だけど?」


佐野君はそう言うと、立てた膝を撫でながら、私の方を見た。


佐野君は癖なのか左膝をよく撫でる。


「…えっと…」


私はどう答えていいかわからず、言葉に詰まる。


それって、デート?みたいな感じ?


佐野君とデート?


どうしよ。


なんか……嬉しいかも…


「…ダメなら諦めるけど…」

「だっ…ダメじゃないっ…」


私は咄嗟にそう言った。


佐野君は少しびっくりしたような顔になってた。


私なんか変だったかな?


「そんじゃ、今度の日曜。でも大丈夫?彼氏とは…」

「大丈夫。今のところ予定無いから…」

「よし。決まりな」


そう言って笑うと佐野君は私の頬を軽く摘まむ。


私は顔が熱くなった。