マナミとは一応付き合ったけど、2ヶ月程で別れた。
俺はバイトで忙しかったし、バイクの免許を取るために、教習所にも通っていたから、マナミが望むような付き合いは出来なかった。
兄貴が一人暮らしを始めるセンベツとして、GPXを俺に譲ってくれた。
兄貴はもう車に乗っていたから、バイクはあまり必要ではなくなっていたからだ。
乗りたくなったらまた買うからと気前がいい奴。
さすが俺の兄。
太っ腹。
『時々は帰って来いよ?』
そう言って青春を共に過ごした愛車を手放したのだ。
泣ける話。
そんな訳で俺はバイトしながら自活していると言う、今時珍しい位の勤労真面目少年なのだ。ははは。
はぁ…。
と昔の回想も終わり、俺はため息をつく。
今日の奏を思い出す。
今日の奏。
ヤバかった。
可愛いかったし。
やっぱり俺は奏じゃないとダメだ。
マナミと別れた後、コクられたらとりあえず誰とでも付き合ったけど、やっぱり長くは続かない。
最短で1週間とか?
女なんてみんな奏の代わりだったから。
酷い男だ、俺は。
今日バイトの休憩中、奏の事が気になってメールしてみた。
調子に乗って胸まで触ってしまった。
何度も他の女の中で奏を抱いていた俺は、自然と手が出てしまった。
もう返信は来ないかと内心心配だった。
直ぐに返信がきて少し驚いた。
何度かメールのやり取りをして、思わず顔がニヤケてマスターに冷やかされた。
仕方ない、あの奏だぜ?ニヤケもするさ。
なんとでも言ってくれ。
遅かった俺の初恋は簡単には諦められない。
諦めたらそこで試合終了だ。
名台詞だ。
元々体育会系の俺は本当は熱い男なんだ。
障害があればあるほど萌える。
いや、違う。
燃える。
……奏。
初めて会った日からずっと見てきた。
相変わらず悲しそうな笑顔。
今は浮気かも知れないけど、
いつか本気になってほしい。
初めて会った時みたいな顔で笑ってほしいんだ。

