お風呂から上がると静さんが帰宅していて、リビングでテレビを見ていた。
今朝は私達よりも早く家を出てたみたいだけど、お仕事だったのかな?

「静さん、お帰りなさい。お仕事だったんですか?」

「あ♪奏ちゃん、ただいま。うん、今日は仕事、早番だったからもう終わり♪」

壁の時計を見ると午後6時になろうとしていた。

そろそろ帰らないと…
でも、佐野君寝かせといてあげたいし…

少し位なら遅くなっても大丈夫だよね?美樹ちゃん。

「お仕事お疲れ様です。静さんのお仕事って何ですか?」

ソファに座る静さんの隣に腰掛け訊ねると、

「俺の仕事?美容師だよ♪」

「美容師!?」

静さんの以外な職業に驚く私。

「……そこまで驚く?」

美容師なんて職業に思い付きもしなかった私は、静さんをマジマジと見つめた。

あ。

でも、静さんってお洒落だし、スマートでカッコいいし、お喋りも楽しいし、昨日だって買い物してる時も、洋服とか選んでる時に思ったけど、女の子が好みそうなものよくわかってるって言うか。(水着はアレだけど…)

考えてみれば静さんにピッタリな職業なんじゃないかと思う。

「いえ、静さんにお似合いな仕事だと思います」

「だろ?俺。女の子可愛くするの好きなんだよね?奏ちゃん。ちょっとメイクしてみない?」

「えっ?」

「あ。その前に、髪乾かそうか?俺の部屋行こ♪」

そのまま静さんの部屋に連れていかれてしまった。

佐野君の部屋より少し広い。
12畳位のフローリング。

でも、驚いたのは壁を埋め尽くさんばかりの漫画本とDVDと女の子のお人形。

…これは凄い。

お人形を見てみると、凄くリアルな物から可愛らしい物まで。

杖を持っていたり、箒に乗ってたり、羽が生えていたり、なんとかスーツ?を着ているアニメのヒロイン。

「うわぁ…コレ全部集めたんですか?」

「うん♪可愛いでしょ?」

「はい。凄く可愛いです」

暫く並べられているお人形達を見ていると、

「さ、奏ちゃんこっちにおいで」

静さんがメイクBOXをテーブルの上に置いて、ドライヤー片手に私に手招き。

本物のスタイリストさんにメイクしてもらうなんて、ちょっと緊張しちゃう。