「あっ。佐野先輩!奏さん!まだ居た!よかったぁ」

帰ろうと駐輪場から佐野君が自転車を引っ張り出していると、マサト君が走ってこちらに向かってきた。

「あの、コレ」

マサト君から受け取ったそれは私と佐野君が映った写真。

「職員室のプリンタとPC使ってカラー印刷したのをラミネートしたんです、とりあえずコレだけ、他の写真はちゃんと原像出してから佐野先輩の家に届けますね」

お互い頬ををくっ付けて、笑顔の佐野君と赤い顔をした私。

「写真?見せて」

佐野君に写真を渡すと、

「はは。綺麗に撮れてんじゃん、奏、可愛い」

「可愛くないよ、そんな…」

ゆでダコみたいな顔…
佐野君は凄くかっこよく写ってるのに…なんか…釣り合わない。

「ですよね?この写真が一番綺麗に撮れてました、だから今日中に渡したくて、先輩、もう来ないって言うし…」

マサト君は肩を落として、ホントに残念そう…
そんなマサト君の頭を佐野君はグシャグシャと撫でると、

「県大会、頑張れよ?」

「私も応援してる、頑張ってね。マサト君」

「はいっ!先輩。今までありがとうございました!」

マサト君は両手をきっちりと揃えて、佐野君に深々とお辞儀した。
そんな事をやっている内に、次々と他のみんなも集まってきて、

「佐野先輩、時々でもいいから、顔出して下さい…」
「試合では必ずダンクを決める!」
「あはは。お前には無理だ」
「先輩!俺達必ず全国行くから!」
「その時は応援来て下さい!」
「奏さんも一緒にっ!」

みんなに囲まれる私達。

ホントにみんな、バスケと佐野君が大好きなんだね。

「…行けよ全国…そんで、優勝しろ」

佐野君がみんなを見渡しそう言うと、

「「「「「「はい!」

一斉に声を出す。


それから私達はバスケ部のみんなとお別れをして学校を後にした。
上りはキツくてノロノロだった坂道も、帰りはスピードをあげて一気に下る。
振り落とされないように、ギュッと佐野君にしがみついた。
それに気付いたのか佐野君は、キィー、とブレーキを握り、今度はゆっくりと下っていく。


坂道を見上げると中学校の屋上が見えて、あそこからの景色がもう見れないのかと思うと、少し寂しくなった…