「………あ…」


奏は突然泣き顔を見られて、戸惑っている様子。


「…何泣いてんの?どっか痛い?」


俺は咄嗟にこんな事を言った、何で泣いているのかは大体想像がつく。


多分さっきのアレだ。


「…うん…お腹が…少し」


奏は泣いてる理由を俺に腹痛だと説明した。


嘘つけ。


いや、おそらくホントに腹痛でここに来たのだろう。


それで見舞いに来たアイツが急に発情したんだろ?多分。


……俺も。
人の事言えないけどね……


「…薬…飲んだ?」

「…うん」

「…泣くほど痛いんなら早退すればいいじゃん」

「…そうなんだけど…彼氏…待ってないと…そう言われてるから…」

「…はあ?具合悪いのに待ってろってか?あんたの彼氏ヒデー奴だな?」


俺は男に対して毒づいた。
ホントにサイテーな奴だな?おい。


「…そうかもね…」


あれ?否定しない?認めてる?ホントに酷い奴なの?


「…だったらサッサと別れちゃえば?」

「……無理だよ…」


奏はうつ向き、呟いた。


「…無理って何だよ?サイテーってわかってんなら別れればいいじゃん?」


俺は何気に別れる方向に向けて奏に熱く熱弁する。
俺の願望でもある。


悪いか?


「はは…それが出来ればいいんだけどね…」


は?


ちょっと待て、奏は別れたがってる?
だったら俺にもチャンスが、いやさらに待て、そもそもあんなに辛そうなのに何で別れない?

謎だらけだ。


「じゃあさ。彼氏と別れたら俺と付き合ってよ」

「…えっ?あ…ごめんなさい…彼と別れたりしないから、それにあなたの事知らないし」


……ガーン。


俺の事忘れてる?
ダンクシュートしたあの人だよ?俺は。
確かにあの時はまだうぶだった俺。


髪も金髪じゃなかったし。


「…それに…彼とは離れられないから…仕方ないんだ」


そう言って寂しく笑う奏。


離れられない?
何で?


奏と話してると頭が混乱してくる。





今思えばそれは奏の心の奥底の本心だったんだとわかる。
油断して本音が溢れたんだろう。


その頃の俺にはさっぱりだったけどね。