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「奏さん、手伝ってもらってありがとう、助かったよ、あいつら、ほっぽり出して行きやがって…」

佐野君達が学校に戻ってしまって、私はバスケ部一年生の子達と後片付けのお手伝いをしていた。

手伝いと言っても片手が不自由な私は、先生の車に道具を少しつづ運んだだけ。

後は他の子達が殆どやってくれて、

「いえ、私は何も、かえって気を使わせてしまったみたいで…」

「いやいや、あいつらも奏さんに良いとこ見せようとして、張り切ってたから、早く片付いたよ」

笑いながら、バタン、とトランクを閉める先生。

「しかし茜のやつ…教師になるって…はは…」

「…佐野君は…高田先生みたいになるのが夢なんです…」

先生は車に寄り掛かり、うで組みをして駐車場から海岸を眺める。

先生と同じ方向に目をやると、太陽の陽射しで輝く水平線に目を細めた。

さっきは楽しかったな。
バーベキューなんて初めて。

みんなと記念撮影?までして。
ふふふ。

佐野君がシャッターを押して。

佐野君の一言にみんな顔を歪めての記念撮影。

後で見せてもらったら、みんな面白い顔してた。

その後に、佐野君と二人で初めて写真を撮った、マサト君が撮ってくれて、佐野君たら顔くっ付けて来るんだもん、(上裸だし)恥ずかしくて顔が赤くなってた。

他にも沢山撮ってくれた。

心の中では何度も佐野君にシャッターを押したけど、ホントに一緒に写真撮れたなんて、夢みたい。

嬉しかった。

目に見えない宝物は佐野君から沢山貰ったけど。

形がある物って凄く嬉しい。

佐野君から依然貰ったスタジャンは、クローゼットの中に大事にしまってある。

時々出して着たりしてるけど…

合鍵にも可愛いキーホルダーを付けよう。

…ああ。色々考えるだけでも幸せな気持ちになる。

……だって。

佐野君が私の事を…

「…俺みたいに…か、ホントにそれでいいのかな…」


先生が呟く一言に急に現実に戻り、ドクン、と心臓がひとつ脈打つ。

……佐野君、行かないって言ってた。

一緒に居たいって…

教師になるって…そして…私の夢…

…それなのに…

先生の一言で胸の奥が小さく疼く…