「ヒィ〜…死ぬ〜…」
「はあはあ…明日…立てない、かも…はあ…」
「……ぎぼぢわるい…」
「おい!こんな所でリバースすんなよ!」
「そうだぞ!肉が勿体ない!」

坂道ダッシュを終えて、体育館に戻ってきた部員達は死屍累々。

そりゃキツいだろ?
昼飯後だし(しかも肉)

「よし、次、腕立て500回」

「「「「「「えぇ〜〜っ!?」

心地よいブーイングの嵐。

「つべこべ言うな、ほら、起きろ」

寝そべるコースケを足で転がす。

「はあ…先輩…俺が…悪かったっす…勘弁して…はあ…」

「…何で謝る?」

「奏…さんと…写メったの…怒ってる…んでしょ?…」

「そんな事位で怒る訳ないだろ?バカだな、コースケは、ははは」

当たり前だ、怒りMAXだ。

「……やっぱり怒ってる…鬼め…」

「は?何か言ったか?コースケ」

「……何でもないす…」

全く。

これくらいで情けない。
そんな体力無くて全国大会勝ち進んでいけるのか?
これから夏本番になるって言うのに…

ますます状況はキツくなってくるんだぞ?
なんて、自分の事でもないのにこれからの体力戦の心配をしていると、

「…いち…にっ…さんっ…しっ…」

一人だけ腕立てを始めてるやつが居た。

見るとマサト。
ベンチ入り出来たのも頷ける。

(シャッター押させたのはムカついたけどね?)

二年の中でもピカイチ。
聞くとバスケは中学から始めたらしい。

凄いと思う。
この中で一番見込みがあるのはマサトだ。

来年はグンと背も延びるだろう。
俺もそうだったから…

マサトを見ていると昔の自分を見てるみたいで、つい片寄せしたくなる。

日を追うごとにその成長は著しく、目を見張るものがある。

こんな風に誰かの才能を見出だすのも悪くない。


…例え自分自身がコートに立てなくても…


「ほら!何やってる!マサトは始めてんぞ!三年!お前ら今年で引退だろ!」

その一言で気合いが入ったらしく、リョータ達は慌てて腕立てを始める。

ほら。
やれば出来んじゃん。
もっと筋力と体力付けて、あの激戦を勝ち進んで欲しい。

だってお前ら、バスケが大好きなんだろ?


頑張れよ。