それから俺は奏を目で追うようになる。


でも奏にはすでに彼氏が居た。


……ショック。
はい。終わり。


てな訳にはいかず、俺はやり場のない気持ちをもて余していた。


何せ中学時代はバリバリの部活小僧だった俺。


告られた事は何度もあるけど、バスケ中心だった俺はそんなものに全く興味が無かった。


もちろん恋愛なんてした事もなく、どうすればいいかすらわからない。


だから、とりあえず目立つ事にした。


髪を金髪にし、右耳にピアスを三個開けた。


眉も綺麗に整えて、はい。イケメン茜くんの出来上がり。


………俺はバカか?


でもこの効果には俺も正直驚いた。


女の子が寄ってくる、寄ってくる。


ははは。


でも寄ってきて欲しい女の子は見向きもしない。


……はぁ…




あの笑顔をもう一度見たい。


跳べなくなった俺にあんなに眩しい笑顔を見せてくれた奏。


でも奏を見ているうちにわかった事がある。


奏はあまり笑わない。
特に彼氏と居る時。


笑っているんだけど、時々俺にはそれが泣いているようにも思えて。


笑わない奏はそれでもとても綺麗で、男子生徒が(俺も含め)遠巻きに見つめていた。


高値の花。


そんな言葉が奏にはピッタリだった。



ある日俺は前日のバイトで帰宅が遅くなり、かなりの寝不足で、腹痛と言う事にして、朝から保健室のベッドで寝ていた。


カーテンで仕切られた隣のベッドから何やら会話が聞こえてきて、次第に意識が戻ってきた。


………うるせぇな。


一言文句を言ってやろうと思い、起き上がりカーテンに手をかけた。


「…ダメ…佑樹、隣に誰か居るよ?……」

「大丈夫だって、寝てるし…先生も居ないし…な?」

「でも…あ…ダメ、…んっ」

「…奏…少しだけ」


瞬間。
俺は凍りついた。


奏?
えっ?まさか…


俺は恐る恐るカーテンを少しだけ開けて、隣のベッドを隙間から覗いた。


そこには。


制服が乱れ、切な気な声を出し、男を受け入れている奏の姿があった。


俺は目を反らす事も出来ず、奏のそ今にも泣き出しそうな顔を見つめていた。