静さんの運転する車で佐野君のアパートへと帰る私達。

「あはは♪兄弟喧嘩なんてスキンシップの一種だよ?ガキの頃なんか毎日殴り合いしてたよな?茜?」

ハンドルを握る静さんが、助手席に座る私にそう言うと、後部座席の佐野君をミラー越しに見る。

「つまんない事でよく毎日喧嘩してたよな…おかずの取り合い、トイレの奪い合い…大体兄貴は大人気ないんだよ、7つも歳上のくせして…」

「あはは。それだけお前の事が可愛くて仕方ないんだよ」

「……何それ?キモッ!」

そう言ってプイッと子供みたいに顔を反らす佐野君。

最近の私って佐野君の事、時々可愛いなと思ってしまう時がある。

そんな佐野君を見逃すまいと、常に私の瞳は佐野君を追ってしまっている。

これはかなりの重症だ…

でも、兄弟っていいな。
一人っ子の私は兄弟喧嘩なんて知らないから、さっきは驚いちゃったけど、佐野君と静さんはそれが当たり前の事なんだ。

「照れるな、茜、お前も小さい頃は、しず兄ちゃん、しず兄ちゃんって、俺の後ついて回って可愛かったのになぁ、今じや俺よりデカくなりやがって…ヤッパ可愛く無い…」

「そう言えば、さっき体育館で身長計ってみたら、2センチ伸びてたな…」

「お前まだ成長してんのか?今何センチだ」

「190あった…」

「デカっ!巨神兵かっ?お前は!」

……190…
私との身長差33センチ…

私もそんなに低い方じゃなくて、普通だと思うんだけど、佐野君の隣に並ぶと私の頭は佐野君の肩の下にあるから、それだけ佐野君は大きいんだ。

佐野君カッコいいし、モデルにもなれそう…

それから15分程して佐野君のアパートに帰りついた私達。

階段を上がりドアの前で佐野君は、

「あれ?鍵が無い…部屋に忘れてきたか?」

そっか、今朝は私が部屋に居たから、鍵忘れちゃったんだね、佐野君。

「今朝は私が鍵閉めて出たから、コレで開けれるね?」

私は今朝佐野君から貰った鍵を鞄の中から取り出し、鍵穴に鍵を差し込む。

「あ、そか、今朝は奏が最後に部屋出たんだ」

「うん。だから佐野君忘れちゃったんだね、さ、入ろ?」

「……なんか、お前ら、新婚夫婦みたいだな…」

後ろで静さんが呟く。