「あ〜〜!いい汗かいたっ!」

「ホントだね?こんなに沢山運動したの久しぶり♪」

「でも、佐野君ってホントにバスケ上手いよね?」

「ただのチャラ男じゃなかったか!以外な一面を見たよな?」

「うんうん。いつもボンヤリしてるのに、あんな佐野君初めて見た」

体育館を出て前を歩くみんなは、それぞれ今日の感想を言い合ってた。

「じゃあな〜、佐野、お疲れ〜」

「奥村さん、バイバイ♪また来週〜」

「茜〜、またな〜」

徐々にみんなバラけ出して、私と佐野君二人になった。

拓也君はバイトがあるからと、美樹ちゃんと少し早めに帰っていった。

帰り際、美樹ちゃんが私に言った事を思い出す。

『今日、佐野君の実家に行くんだよね?あ。帰って来る時は、あたしんちに真っ直ぐ帰って来ていいからね?楽しんで来なよ?かなちゃん』

私と佐野君の複雑な関係を理解してくれて、色々と協力してくれる美樹ちゃん。
ホントにありがとう。
私。美樹ちゃんと親友でよかった。

「汗ベタベタ、早くシャワー浴びたい」

佐野君はシャツの首元をパタパタとさせてそう言ってきた。

「沢山汗かいたもんね?」

「うん。今日は特に熱かったしな?」

「まだ5月なのにね?」

「直ぐに夏になるよ、あ。その前に梅雨入りするなぁ…」

「…雨降ると、膝、痛むんだよね?」

「はは。少しね?でも仕方ない、ずっとコレと付き合ってかないといけないからな」

言うと片足を上げて、左膝をポンと叩く佐野君。

「練習、大丈夫だった?膝、痛くない?」

「大丈夫だって、奏の腕の方が心配だよ、俺は」

「私は大丈夫だよ、自然と治っていくから、でも佐野君は…」

「ははは。そんなに深刻なモンじゃないよ、今日だって普通に走ってただろ?」

「…そうだけど…」

四時間目の授業中、佐野君のあの苦しそうな顔を思い出してしまって、私は素直に頷く事が出来なかった。

バス停に向かい佐野君と二人で歩道を歩いていると、後ろからクラクションが鳴り、その赤い車が私達の少し前、歩道ギリギリに横付けして停車した。

ドアを開け、運転席から降りてきたのは、

「奏ちゃ〜ん♪迎えに来たよ〜♪」