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「福田っ、リバン!そうっ!速攻っ!戻って!沢田。カット!……おおっ。上手い上手い!女子もどんどん攻めて!周りよく見て、繋いで!野郎共は反応が鈍い!切り替え早く!よし!そのままシュート!…あはは。決まった!ホラ!ゴール下!常に意識をボールに向けて!」


みんながコートの床を鳴らして走り回ってる。

佐野君は審判をしながらコートを走り回り、普段はあまり出さない大きな声をあげて、みんなに指導してる。

みんなもその声に答えるように、佐野君の言う通りに動いてボールを追いかけている。

……いいな…楽しそう。
私も佐野君に教えて欲しかったな。

「佐野君、なんか別人みたいだね?かなちゃん」

体育館の隅の壁に寄り掛かり、私と美樹ちゃんはその練習を見学していた。

「うん。バスケやってる佐野君は普段とは違うね」

……凄くカッコいい。

「…かなちゃん、今、佐野君の事、凄くカッコいいって思ったでしょ?」

「えっ?何でわかるの?」

言い当てられて、驚く私。

「だってかなちゃん、うっとりしてるもん、あはは」

……うっとりって。
そんなに顔に出てる?私。

「…もう、美樹ちゃん、からかわないでよ」

「あはは。ごめんごめん、でも最近のかなちゃん凄くいいよ」

「…いい?何が?」

「なんかね?楽しそう、可愛くなった?佐野君のせいかな?」

と、私の顔を覗き込み、悪戯っぽく笑って見せた。

…可愛い?私が?
こんなに暗くて地味なのに…

でも、笑顔を心がけようって思ってから、よく笑うようになったのは確か。

佐野君と居ると楽しい事が一杯あるから。

さっきのファミレスでも、宮地君と拓也君が佐野君の取り合い?してて困ったような佐野君を見てると、つい可笑しくて、他の子と一緒になって笑って写メを撮った。

その佐野君の困った表情がなんだかとても可愛くて。
綺麗に写メに残そうと真剣にピントを合わせてしまった。

クラスの女の子達とそれを見せ合ったりして、それが凄く楽しくて。

私でもあんな風にみんなとはしゃいだり、楽しくお喋りしたり出来るんだ。

たったそれだけの事なのに、私は凄く嬉しくて、佐野君と知り合ってからの私は、毎日がとても楽しい。