「あれ?佐野?」

ドリンクバーで飲み物を注いでいると、後ろから呼ばれて振り返る。

「あ。拓ちゃん」

「あはは。偶然、俺達も飯食いに来たんだ、ほら」

と、窓際の席を指差す、そこには美樹。

美樹も俺に気付き手を振っていた。

「かなちゃんと来たのか?佐野」

「奏も居るけど…」

と、バスケの仲間と来た事を説明する。

「練習かぁ…な?俺も混ぜてよ?」

「は?クラス違うじゃん、拓ちゃんは敵だ」

「敵って何だよ?いいじゃん佐野のケチ!」

…最近よく言われるけど…俺ってそんなにケチか?

「茜〜?早く戻ろうぜ」

貴司がそう言って割り込んできた。

「あ。うん」

奏の烏龍茶も早く持ってってやらないと。

「佐野、俺達と食べようよ?かなちゃんも一緒にさ」

拓也がそう言ってきた、すると貴司が、

「は?誰だよお前、佐野は俺等と一緒に来たんだぞ?」

「俺は佐野の親友だ」

ふんっ。と、何故か胸を張る拓也。

「俺だってクラスメートだし!」

負けずに貴司も言い返す。

……何?この流れ…

拓也はぷうっと顔を膨らませて、

「俺と佐野はな、スゲー仲いいんだぞ!な?佐野?」

と、俺の肩に手を回す拓也。

「俺だって仲いいんだぞ!今度合コン行く約束したよな?茜」

……してないし。

「おっ、俺なんかポチって呼ばれてるんだぞ!佐野の犬だ!今度首輪付けてくれるって言ったよな?佐野」

……言ってないし。

気付けば沢山の視線が俺達に集まっていた。

「…茜…お前って…生まれ変わったって…そっちに走ったのか?」

貴司の顔色がみるみる内に青ざめる。

んな訳あるか、俺が好きなのは女の子だ、奏限定だけど。

「それとな!俺となら一線越えてもいいって言ったんだぞ!な?佐野?」

言うと拓也は俺の腰に手を回し、ギュッと抱き着いてきた。

静まり返る店内。
抱き合う俺達に集まる視線。

グラスを両手に上げ、為す統べもなく立ち尽くす俺。


……誰か、助けて下さい…